2017年5月6日土曜日

MARCH対決:中央大理工学部VS立教大理学部

 MARCHというくくりの中で、長らくライバルとして競ってきた中央大と立教大。今回は中央大理工学部と立教大理学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
立教大学
理学部
大学全体の学部生数(人)大学20152508019481
学部の学生数(人)学部201541011230
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165355
入試難易度(ベネッセ)学部20166767
入学者数(人)学部2016899265
競争入試での入学者(人)学部2016564203
競争入試の割合(%)学部201662.70%76.60%
入試方式の数(競争入試)学部201535
現役入学者の比率(%)学部201678.3数値なし
※立教大の競争入試の入学者数、割合は2015年度の数値

 入試難易度は立教大理学部が2勝1分の数値となっている。
 「競争入試の割合」は立教大理学部の方が高いが、入学定員は中央大理工学部が圧倒的に多い。したがって、偏差値操作の要素としてはプラスマイナスゼロで、予備校の出す難易度通りで考えていいだろう。少しだけ立教大理学部が上といえよう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、入学定員が少ないと偏差値が高く出やすい。そのため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「入学定員」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
立教大学
理学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015636654
学生還元率(%)大学201535.70%38.40%
奨学費(円)大学20151,245,994,977680,670,582
学生一人当たりの奨学費(円)大学20154968134940
卒業率(%)学部201482.577.5
最寄駅の平均家賃(万円)20167.5~86.5~7

 4年間でかかる学費については、中央大理工学部が18万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率は立教大が高いが、僅かな差であり、一人当たりの奨学費については中央大がかなり多いことから、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、ほとんど互角か、中央大がわずかに勝っている印象を受ける。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、コスト的には立教大の方が割安となることが予想される。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、中央大が5%ほど低い。大差ではないが、参考になる数値であろう。
 以上を総合すると、コストパフォーマンス面では中央大に軍配が上がるということになる。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
立教大学
理学部
キャンパス学部2016後楽園【都市型】池袋【都市型】
1年以内退学率(%)学部201410.7
4年間退学率(%)学部20144.74.6
入学者の地元占有率(%)学部201632.4数値なし
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201556.173.3
女子入学者の割合(%)学部201623.229.6
大学全体の女子学生数(人)大学2016906410377
大学全体の男子学生数(人)大学2016157579069
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.50%53.40%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011238120
受入留学生数(人)学部2015656
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.60%0.50%
長期留学派遣学生数(人)大学201585121
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%2.50%
ST比(人)学部201522.219.8
専任教員数(人)学部201518562
一人当たり貸出冊数(冊)大学20154.810.3

<キャンパスの立地>
 中央大理工学部は、東京ドーム近くの後楽園キャンパスで4年間を過ごすことになり、文系と違って「都市型キャンパス」である。一方の、立教大理学部も、巨大ターミナル駅である池袋駅から徒歩7分の抜群の立地。
 キャンパスの立地については、甲乙つけがたいが、利便性などで勝るのは立教大といっていいだろう。ただし、使用路線などによっては、「東京のど真ん中」といえる中央大後楽園キャンパスの方がアクセスしやすいこともありうる。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、ほぼ互角である。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、中央大が20位(29ポイント)、立教大が23位(28ポイント)となっており、高校教育の現場においては、僅かな差ではあるものの、中央大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生比率は立教大理学部の方が高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。もっとも中央大において女子学生比率が特に低いというわけではなく、立教大の比率が絶対的に高いということである。
 なお、留学生比率については中央大理工学部が高く、国際色豊かな教育環境という意味では、中央大理工学部が勝っている。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合が、立教大は2.5%、中央大は1.4%となっており、立教大に軍配が上がる。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、立教大理学部が低い。「少人数教育の環境」は立教大理学部に軍配が上がる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、立教大の勝ちである。この数字は中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、中央大が19人、立教大が16人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、中央大が10人、立教大が4人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、立教大は13位(47ポイント)となっている。こちらでは、立教大が優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、立教大理学部がやや優勢のような印象を受ける。ただし、両学部は学問分野が異なる部分もあるため、あくまでも学部全体の数値を比較した場合、であるのでこの評価を鵜呑みにはしないでいただきたい。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
立教大学
理学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.328.3
卒業生数(人)学部2015922294
進学者数(人)学部201536581
進学率(%)学部201539.60%27.60%
公務員就職者数(人)学部2015588
公務員就職比率(%)学部20156.30%2.70%
警察官就職者数(人)大学20152812
国家公務員総合職(人)大学2015483
CA採用数(人)大学20141324
国会議員の数(人)大学2015315
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201585344023
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.340.21
上場企業の役員数(人)学部200663数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015969250
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0390.013

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 その上で、主要400社への就職率をみてみると、立教大がやや高い。ただし、男子学生のみで考えると、両校の差はほとんどないだろう。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。立教大は先述の通り、女子学生が多く、この数字が高く出やすい。そのため、男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、ほぼ同じと考えられる。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、中央大理工学部と立教大理学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、中央大理工学部の方が高いため、大学院進学を考えているのであれば中央大学理工学部がいいかもしれない。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は中央大理工学部の数値が高い。公務員就職を目指すなら、中央大理工学部が良いかもしれない。

<主要な就職先の比較>

中央大学
理工学部
立教大学
理学部
東京都庁りそなホールディングス
東京都教育委員会東日本電信電話
SCSK国家公務員
日本電気日本IBM
キヤノンアサヒビール
日立システムズいえらぶGROUP
東日本旅客鉄道SCSK
東日本電信電話日本ヒューレット・パッカード
千葉県庁鉄道情報システム
神奈川県横浜市役所富士通

 主要就職先を見てみると、中央大理工学部は公務員が目立つ。両者に明確な差はみられないが、少し主観を交えていうなれば、立教大理学部の就職先は外資系などが上位に入っており、一方の中央大理工学部の就職先は手堅い安定型の進路先が並んでいる。一つの参考材料にはなるだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、中央大理工学部が優位である。大学全体の「上場企業の役員数」などで中央大が圧倒しているのは、中央大の看板学部・法学部による部分が大きいためであるが、理工学部単体の輩出実績もかなりのものである。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、中央大や立教大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
立教大学
理学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015596,960391,199
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152420

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、中央大の方が優勢となっている。
 ただし、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、中央大が50位(17ポイント)、立教大が23位(17ポイント)と、高校現場の印象では、立教大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、中央大理工学部と立教大理学部を比較してみてきたが、全体の印象としては立教大理学部の方がやや優位と感じられる。しかし、コスト面と進路面では中央大理工学部が優勢の印象もあるため、その差は僅かであろう。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、中央大理工学部に進学した人が36%、立教大理学部に進学した人が64%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。
 しかし一方で、強調したいのは、「理系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。