2017年5月26日金曜日

GMARCH対決:青山学院大理工学部VS学習院大理学部

 今回は、GMARCHの中で存在感を発揮する、青山学院大と学習院大について比較していく。比較対象は青山学院大理工学部と学習院大理学部で、双方に合格した場合はどちらに進学するのが良いかといった観点で比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
大学全体の学部生数(人)大学2015176018261
学部の学生数(人)学部20152695951
入試難易度(河合塾)学部201657.555
入試難易度(駿台)学部20165352
入試難易度(ベネッセ)学部20166464
入学者数(人)学部2016646220
競争入試での入学者(人)学部2016459150
競争入試の割合(%)学部201671.10%68.20%
現役入学者の比率(%)学部201679.377.3

 入試難易度は青山学院大理工学部が2勝1分の数値となっている。予備校としては、青山学院大理工学部が上と判断しているようだ。
 なお、「競争入試の割合」は青山学院大理工学部の方がやや高い。しかし、大差ではないため、予備校の難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。偏差値操作の実態を加味するため、本ブログでは競争入試の割合を比較するようにしている)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015639630
学生還元率(%)大学201531.80%37.00%
奨学費(円)大学2015385,868,990282,939,439
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192334250
卒業率(%)学部201476.884.3
最寄駅の平均家賃(万円)20164.0~4.56~6.5

 4年間でかかる学費については、学習院大の方が9万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 また、学生還元率や一人当たりの奨学費は学習院大が勝っており、学費還元面では学習院が有利といえる。
 なお、一人暮らしをする場合、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、青山学院大の方が割安となることが予想される(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 さらに、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、学習院大理学部の方が8%ほど低い。僅差とはいえない数値であり、参考になる数値であろう。
 以上を総合すると、コスト面では、学習院大理学部が優位といっていいだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
キャンパス学部2016相模原【郊外型】目白【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.91.3
4年間退学率(%)学部20145.63.9
入学者の地元占有率(%)学部201640.235
女子入学者の割合(%)学部201621.435.9
大学全体の女子学生数(人)大学201687074276
大学全体の男子学生数(人)大学201690274282
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%50.00%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011277102
受入留学生数(人)学部2015280
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%0.00%
長期留学派遣学生数(人)大学20158470
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%3.40%
ST比(人)学部20152014.9
専任教員数(人)学部201513564
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.711.3

<キャンパスの立地>
 青山学院大理工学部は、文系とは異なり神奈川県相模原市のキャンパスで4年間を過ごすことになり、「郊外型キャンパス」である。学問分野からすると、遊ぶ暇はあまりないため、勉強する環境としては決して悪くない環境といえる。
 一方の学習院大理学部は、アクセスは良好で、JR山手線の目白駅から徒歩30秒の立地にキャンパスを構えている。通常、都市型キャンパスは学生数に対して敷地が狭く、窮屈なイメージがあるが、学習院は例外で、緑の多い広々としたキャンパスで4年間を過ごせる。
 キャンパスの立地については、学習院大理学部の方が優位といえるだろう(学習院大理学部の場合は、他の学部の学生と同一キャンパスで交流ができるのも魅力の一つである)。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、4年トータルでみると学習院大理学部の方が低いことがわかる。しかし、青山学院大理工学部の数値も高くはない。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、学習院大が30位(26ポイント)となっており、高校教育の現場においては、青山学院大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生比率については学習院大理学部が高い(学問分野の違いが原因と推測される)。
 また留学生の割合については、青山学院大理工学部が高く、国際的な学習環境の観点からは、青山学院大理工学部が優位といえる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、学習院大がやや優勢か。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないかもしれない。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)については、学習院大理学部の方が低い。「少人数教育」の環境については、学習院大理学部に軍配が上がる。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、学習院大がやや多いという数字が出ている。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、学習院大が7人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、学習院大がランク外(3人以下)であり、高校側の印象では、学習院大の方が勝っているようだ。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、学習院大は27位(18ポイント)となっている。こちらでは青山学院大がやや優位のようだ。なお、これらの高校教員向けのアンケートについては、学生数が多い大学が有利になる傾向にあるため、学生数が学習院大の2倍程度いる青山学院大の方が有利な結果が出やすいことは考慮しておいた方が良いだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、学習院大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
主要企業400社への就職率(%)大学20163027.8
卒業生数(人)学部2015641225
進学者数(人)学部201522573
進学率(%)学部201535.10%32.40%
公務員就職者数(人)学部2015109
公務員就職比率(%)学部20151.60%4.00%
警察官就職者数(人)大学2015167
国家公務員総合職(人)大学20154数値なし
(1人以下)
CA採用数(人)大学20145012
国会議員の数(人)大学2015107
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201540251604
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.19
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015233146
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.018

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、青山学院大がやや高い。
 ただし、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大理工学部と学習院大理学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくるだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、青山学院大理工学部の方が高いが僅差である。大学院進学面では優劣はつかない。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、学習院大理学部の方が高い。もっとも、両学部においては学問分野の違いあるため単純比較はできないだろう。

<主要な就職先の比較>

青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
日本電気埼玉県教育委員会
アクセンチュア東京都特別区
NECソリューションイノベーター神奈川県教育委員会
みずほフィナンシャルグループアメリカンファミリーライフ
アシュアランスカンパニーオブコロンバス
SCSK大成建設
東海旅客鉄道東日本旅客鉄道
富士通エフサスみずほフィナンシャルグループ
横浜銀行東京都教育委員会
キヤノン埼玉県市町村
東日本旅客鉄道北海道電力

 主要就職先は、青山学院大理工学部はメーカーや鉄道会社が目立つ。一方の学習院大理学部は教員就職や公務員就職が目立つ。学習院大理学部はほとんど文系就職と変わらない印象を受ける。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、社長輩出率では青山学院大、役員輩出率は学習院大が勝っている。よって学閥面では互角といっていいだろう。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、青山学院大や学習院大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
学習院大学
理学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391314,381
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152938

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、学習院大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、青山学院大が17位(30ポイント)、学習院大は50位以下のランク外であり、高校現場の印象では、青山学院大がやや優位のようだ。

<まとめ>
 以上、青山学院大理工学部と学習院大理学部を比較してみてきた。全体としてはほぼ互角と評価したい。キャンパスライフを重視するなら学習院大理学部であるし、理系人材として就職を目指すのであれば青山学院大理工学部であろう。いわゆる「理工学部」と「理学部」で事情が異なる部分があり、なかなか比較が難しい。
 そのため、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。
 理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。