2017年5月16日火曜日

MARCH対決:青山学院大法学部VS法政大法学部

 MARCHの中のライバル校として知られる、青山学院大と法政大。今回は両校の「法学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20151760127110
学部の学生数(人)学部201521503413
入試難易度(河合塾)学部20166057.5
入試難易度(駿台)学部20165755
入試難易度(ベネッセ)学部20166969
入学者数(人)学部20165091035
競争入試での入学者(人)学部2016343690
競争入試の割合(%)学部201667.40%66.70%
入試方式の数(競争入試)学部201544
現役入学者の比率(%)学部201679.483.1

 入試難易度は「ベネッセ」の数値のみ互角だが、「河合塾」と「駿台」はやや青山学院大法学部の方が上の数値を出している。
 また、「競争入試の割合」はほとんど差がなく、入試方式の数も同一ことから、僅かばかりの差で青山学院大法学部が上と言えるくらいか。
 このくらいの差であれば、偏差値は年によって変動するため、少なくとも「どちらに優秀な学生があつまっている」とはいえる差ではないだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015444432
学生還元率(%)大学201531.80%38.00%
奨学費(円)大学2015385,868,990994,270,147
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192336675
卒業率(%)学部201473.983
最寄駅の平均家賃(万円)20169.5~108.5~9

 4年間でかかる学費については、法政大法学部の方が12万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費でも法政大が勝っている。
 また、一人暮らしをする場合でも、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、コスト的には法政大の方が割安となることが予想される(両大学の場合、徒歩圏内に住むケースは少ないであろうが、大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 さらに、留年リスク(4年間で卒業できない比率)についても、法政大法学部の方が10%ほど低い。
 以上の通り、「コスト」の面では法政大法学部の方が文句なしに優位、いわば「圧勝」といっていいだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
キャンパス学部2016青山【都市型】市ヶ谷【都市型】
1年以内退学率(%)学部20141.20.8
4年間退学率(%)学部20145.43
入学者の地元占有率(%)学部201626.724.7
大学全体の首都圏出身比率(%)大学20156661.6
女子入学者の割合(%)学部201646.837.1
大学全体の女子学生数(人)大学2016870710509
大学全体の男子学生数(人)大学2016902718067
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%36.80%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112776
受入留学生数(人)学部20153434
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.60%1.00%
長期留学派遣学生数(人)大学20158472
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%1.10%
ST比(人)学部201553.852.5
専任教員数(人)学部20154065
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.77.4

<キャンパスの立地>
 青山学院大法学部は、巨大ターミナル駅の渋谷、ハイセンスな街として知られる表参道から徒歩圏内の抜群の立地。表参道周辺の物価は高いだろうが、若者の街・渋谷にも近いため、キャンパス立地の利便性は極めて高いといえる。
 一方で、法政大法学部は市ヶ谷にキャンパスを構えている。ボアソナードタワーを中心として、都市型キャンパスではあるが、周辺はオフィス街の雰囲気が強く、「学生街」としてのイメージはない。とはいうものの、神楽坂が徒歩圏内であったりと、利便性が悪いとも言えない。
 とはいうものの、キャンパスの立地については、青山学院大青山キャンパスに軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、法政大法学部の方が低いことがわかる。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、法政大が18位(35ポイント)となっており、高校教育の現場においては、法政大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。つまり、退学率のデータと合致しているといえる。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、目につくのは、青山学院大法学部の女子学生比率の高さだ。多くの大学において、法学部では男子学生が多いのが一般的であるが、青山学院大法学部においては約半数が女子学生である。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 一方で、さらに両校の学生の属性を比較していくと、大学全体では法政大の地方出身者比率が青山学院大と比べて5%程度多い特徴がある。より法政大の方が全国から学生が集まっているということになる。
 なお、留学生比率については、青山学院大法学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、青山学院大学が優れているといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、青山学院大が優勢か。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、ほぼ互角である。双方ともやや高めの印象を受けるため、少人数教育の充実度はあまり期待できないかもしれない。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや青山学院大が優勢である。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、法政大が17人であり、高校側の印象では、青山学院大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、法政大は47位(11ポイント)となっており、同じように、青山学院大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや青山学院大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201629.822.5
卒業生数(人)学部2015469744
進学者数(人)学部20151732
進学率(%)学部20153.60%4.30%
公務員就職者数(人)学部201556118
公務員就職比率(%)学部201511.90%15.90%
警察官就職者数(人)大学20151657
国家公務員総合職(人)大学201546
CA採用数(人)大学20145020
国会議員の数(人)大学20151011
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学20154,0256,971
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
62
上場企業の役員数(人)大学2015233341
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.013

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、青山学院大の方が高い数字が出ている。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大法学部と法政大法学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、双方の大学とも残念ながら司法試験を目指す環境はあまり整っていないようである。というのも、双方とも「進学率」が低いからだ。
 法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状である。ロースクールに進学する割合がこれだけ少なければ、法曹を目指す学生があまりまわりにいない(=司法試験合格に向けた勉強がしにくい)と考えられる。
 どうしても弁護士や裁判官などの法曹を目指したいというのであれば、同じ偏差値レベルの明治大法学部や、やや上位の中央大法学部など別の大学に進学した方が無難かもしれない。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、やや法政大法学部が高いが、だからといって公務員に有利とえるような差ではない。どちらに進学しても公務員になれる確率はほとんど変わらないだろう。

<主要な就職先の比較>

青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
東京都特別区都道府県庁
みずほフィナンシャルグループ東京都特別区
三井住友銀行警視庁
全日本空輸政令指定都市
三菱UFJモルガン・スタンレー証券みずほフィナンシャルグループ
三井住友信託銀行三井住友銀行
国家公務員日本生命保険
三菱東京UFJ銀行千葉銀行
埼玉県みずほ証券
SMBC日興証券日本郵政グループ

 主要就職先は、青山学院大法学部と法政大法学部で似ており、大手金融機関と公務員が上位となっている。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、こちらもまた変わらない。双方とも名門大学であり、上場企業の役員をそれなりに輩出しているが、「学閥」というほどではなく、「学閥」によるメリットはあまり期待できない、というのが実情だろう。

<上位校との差について>
 双方の大学とも就職実績については良好といえる。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。入社試験を受けるエントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶などにチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学
法学部
法政大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391446,556
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152916

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較したいデータは、大学に国から支給される「特別補助金」の額であるが、この数値を比較すると、青山学院大が優勢である。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、青山学院大が17位(30ポイント)と、法政大が勝っている。


<まとめ>
 以上、青山学院大法学部と法政大法学部を比較してみてきたが、両学部に大きな差は感じられない。しかし、あえて優劣をつけるならば、キャンパスライフを中心として青山学院大法学部の方が優位と感じられる。実際に両方に合格した人の選択を見てみてみると、青山学院大法学部に進学した人が93%、法政法学部に進学した人が7%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。 法政大法学部が勝っている分野も少なくないため、これだけの差があるとは今回の比較からは確認できなかったが、受験生は青山学院大法学部が明らかに上と見ているようである…。