2017年5月14日日曜日

MARCH対決:青山学院大理工学部VS中央大理工学部

 今回は、MARCHの中のライバル校同士である青山学院大と中央大の「理工学部」について比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20151760125080
学部の学生数(人)学部201526954101
入試難易度(河合塾)学部201657.557.5
入試難易度(駿台)学部20165353
入試難易度(ベネッセ)学部20166467
入学者数(人)学部2016646899
競争入試での入学者(人)学部2016459564
競争入試の割合(%)学部201671.10%62.70%
入試方式の数(競争入試)学部201543
現役入学者の比率(%)学部201679.378.3

 入試難易度は中央大理工学部の1勝2分の数値となっている。
 「競争入試の割合」は、やや青山学院大理工学部が高いものの、中央大理工学部も低い数値ではない。また、入試方式の数はほとんど変わらないため。難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
 (MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。その他、偏差値を下げないための方策として、入試方式を増やして、各入試方式の定員を小さくすることで見かけの偏差値を維持するという手法もある。)
 したがって、「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」という観点ではほぼ互角とみていいだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015639636
学生還元率(%)大学201531.80%35.70%
奨学費(円)大学2015385,868,990.01,245,994,977.0
学生一人当たりの奨学費(円)大学20152192349681
卒業率(%)学部201476.882.5
最寄駅の平均家賃(万円)20164.0~4.57.5~8

 4年間でかかる学費については、中央大理工学部の方が約3万円安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 さらに、学生還元率や一人当たりの奨学費は中央大が勝っており、「学生のために学費を使っているか」という観点では中央大が勝っているといえる。
 なお、一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、青山学院大の方が割安となることが予想される。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、中央大が低い。大きな差ではないが、一つの判断材料にはなるかもしれない。
 以上の通り、コスト面では、中央大理工学部が優勢といえそうだ。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
キャンパス学部2016相模原【郊外型】後楽園【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.91
4年間退学率(%)学部20145.64.7
入学者の地元占有率(%)学部201640.232.4
大学全体の首都圏出身比率(%)大学20156656.1
女子入学者の割合(%)学部201621.423.2
大学全体の女子学生数(人)大学201687079064
大学全体の男子学生数(人)大学2016902715757
大学全体の女子学生比率(%)大学201649.10%36.50%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011277238
受入留学生数(人)学部20152865
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%1.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20158485
長期留学派遣の割合(%)大学20151.90%1.40%
ST比(人)学部20152022.2
専任教員数(人)学部2015135185
一人当たり貸出冊数(冊)大学20159.74.8

<キャンパスの立地>
 青山学院大理工学部は、文系とは異なり神奈川県相模原市のキャンパスで4年間を過ごすことになり、「郊外型キャンパス」である。学問分野からすると、遊ぶ暇はあまりないため、勉強する環境としては決して悪くない環境といえる。
 一方の中央大理工学部は、東京ドーム近くの後楽園キャンパスで4年間を過ごすことになり、文系と違って「都市型キャンパス」である。
 したがって、普通に考えるならば、キャンパスの立地については中央大理工学部に軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、ほとんど差はなく、誤差の範囲といっていいだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、青山学院大は27位(26ポイント)、中央大が20位(29ポイント)となっており、高校教育の現場においては、中央大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生比率はほとんど差はない。
 一方で、留学生比率については、中央大理工学部が高く、国際色豊かな教育環境という意味では、中央大理工学部が優勢といえる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、青山学院大がやや優勢か。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、青山学院大理工学部の方がより少なく、より「少人数教育」の環境が整っているといえる。ただし、僅差である。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、青山学院大の勝ちである。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、青山学院大が9人、中央大が19人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、青山学院大が9人、中央大が10人であり、高校側の印象では、中央大の方が勝っているようだ。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、青山学院大は21位(24ポイント)、中央大は28位(17ポイント)となっている。こちらでは青山学院大が優位のようだ。

 上記を総合すると、キャンパスライフの面では、中央大理工学部がやや優勢のような印象を受ける。やはりキャンパスの立地の差は大きいと感じる。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201629.823.3
卒業生数(人)学部2015641922
進学者数(人)学部2015225365
進学率(%)学部201535.10%39.60%
公務員就職者数(人)学部20151058
公務員就職比率(%)学部20151.60%6.30%
警察官就職者数(人)大学201516.028.0
国家公務員総合職(人)大学2015448
CA採用数(人)大学20145013
国会議員の数(人)大学20151031
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201540258534
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.230.34
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)63
上場企業の役員数(人)大学2015233969
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.039

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、青山学院大が6%ほど高い。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、青山学院大理工学部と中央大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、中央大理工学部の方が高い。ただし、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大理工学部がかなり高い。中央大学は伝統的に資格試験や公務員試験に強く、勉強する環境が整っていると推測される。

<主要な就職先の比較>

青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
日本電気東京都庁
アクセンチュア東京都教育委員会
NECソリューションイノベーターSCSK
みずほフィナンシャルグループ日本電気
SCSKキヤノン
東海旅客鉄道日立システムズ
富士通エフサス東日本旅客鉄道
横浜銀行東日本電信電話
キヤノン千葉県庁
東日本旅客鉄道神奈川県横浜市役所

 主要就職先としては、中央大理工学部の「公務員」の多さが目立つ。双方とも人気企業が並んでおり、就職状況は良好といえる。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを数多く輩出しているが、大学全体としての役員輩出率は中央大が3倍程度高い。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういった意味では、中央大学理工学部の方が少し有利と言えるかもしれない。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、青山学院大や中央大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度青山学院大学
理工学部
中央大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015505,391596,960
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152924

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較したいデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、青山学院大が勝っているが、額はあまり差がないため、ほぼ互角といえよう。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、青山学院大が17位(30ポイント)、中央大が50位(7ポイント)と、高校現場の印象では、青山学院大が優位のようだ。

<まとめ>
 以上、青山学院大理工学部と中央大理工学部を比較してみてきたが、総合的にみると中央大理工学部が優勢の印象を受ける。実際に両方に合格した人の選択を見てみてみると、青山学院大理工学部に進学した人が31%、中央大理工学部に進学した人が69%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。
 なお、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。