2017年5月8日月曜日

GMARCH対決:学習院大法学部VS中央大法学部

 今回の比較対象は、GMARCHのくくりの中で比較されることの多い学習院大と中央大。双方の「法学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
中央大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学2015826125080
学部の学生数(人)学部201520666158
入試難易度(河合塾)学部201657.562.5
入試難易度(駿台)学部20165663
入試難易度(ベネッセ)学部20167079
入学者数(人)学部20165011523
競争入試での入学者(人)学部2016195728
競争入試の割合(%)学部201638.90%47.80%
現役入学者の比率(%)学部201688.481.5

 入試難易度は、3社とも中央大法学部がかなり上の数値となっている。
 「競争入試の割合」は中央大法学部の方が高い。そのことを加味すると、実際の難易度の差はさらに開いていると考えて良いかもしれない。
 (一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。そのため、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
中央大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015424421
学生還元率(%)大学201537.00%35.70%
奨学費(円)大学2015282,939,4391,245,994,977
学生一人当たりの奨学費(円)大学201534,25049,681
卒業率(%)学部201483.886.2
最寄駅の平均家賃(万円)20166~6.54.5~5

 4年間でかかる学費については、中央大法学部が3万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方、学生還元率は学習院大が高く、一人当たりの奨学費は中央大が高い。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、互角といえる。
 なお、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、中央大の近辺の家賃が安い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、3%程度、学習院大法学部の方が高いが、誤差の範囲といっていいだろう。
 以上を総合すると、コスト面ではほぼ互角といっていいだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
中央大学
法学部
キャンパス学部2016目白【都市型】多摩【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.41.3
4年間退学率(%)学部20143.73.1
入学者の地元占有率(%)学部201638.333.3
女子入学者の割合(%)学部201649.142.2
大学全体の女子学生数(人)大学201642769064
大学全体の男子学生数(人)大学2016428215757
大学全体の女子学生比率(%)大学201650.00%36.50%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011102238
受入留学生数(人)学部201519
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.00%0.10%
長期留学派遣学生数(人)大学20157085
長期留学派遣の割合(%)大学20153.40%1.40%
ST比(人)学部201549.256.5
専任教員数(人)学部201542109
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.34.8

<キャンパスの立地>
 学習院大法学部は、JR山手線の目白駅から徒歩30秒の利便性抜群の立地にキャンパスを構えている。通常、都市型キャンパスは学生数に対して敷地が狭く、窮屈なイメージがあるが、学習院は例外で、緑の多い広々としたキャンパスで4年間を過ごせる。
 一方の中央大法学部は、東京都八王子市の多摩キャンパスで4年間を過ごすことになり、典型的な「郊外型キャンパス」である。静かな環境で大学生活を過ごしたい場合はうってつけの環境であるが、「遊びたい」と考えている学生は都心部のキャンパスと比べると見劣りするかもしれない。
 キャンパスの立地については、学習院大が勝っていると言えるだろう。学習院大のキャンパス環境は、私立大学の中でもトップクラスといえるほどである。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率と4年退学率のトータルで考えると互角と考えていいだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、学習院大が30位(26ポイント)、中央大が20位(29ポイント)となっており、高校教育の現場においては、中央大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、学部単体、大学全体の双方とも女子学生比率は学習院大法学部が高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 また、留学生比率については、中央大法学部の方が高いが、絶対的な数値としては低いため、どちたも国際的な教育環境が整っているといえるとはいえない。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、学習院大に軍配が上がる。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)については、学習院大法学部の方が低い。「少人数教育」の環境は学習院大法学部が勝っている。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、学習院大が多い。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、学習院大が7人、中央大が19人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、学習院大がランク外(3人以下)、中央大が10人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところであろうか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、学習院大は27位(18ポイント)、中央大は28位(17ポイント)となっている。こちらも、ほぼ互角と言っていいだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、学習院大が優勢のような印象を受ける。やはりキャンパス面での差が大きい印象である。
 (ただし、法学部であれば司法試験を志す学生もいるかと思われるが、そのような学生にとっては静かに勉強できる環境にある中央大のキャンパスの方が良いと思われる)


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
中央大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201627.823.3
卒業生数(人)学部20154611446
進学者数(人)学部201524213
進学率(%)学部20155.20%14.70%
公務員就職者数(人)学部201546254
公務員就職比率(%)学部201510.00%17.60%
警察官就職者数(人)大学2015728
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし
(1人以下)
48
CA採用数(人)大学20141213
国会議員の数(人)大学2015731
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
23
社長の数(人)大学201516048534
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.190.34
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
186
上場企業の役員数(人)大学2015146969
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0180.039

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、学習院大の方が4%ほど高い数字が出ている。
 ただし、男子学生のみで考えると、その差はほとんどないと考えていいだろう。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。学習院大は女子学生比率が高く、この数字が高く出やすい。そのため、男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、ほとんど変わらないのではないかと推測される。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、学習院大法学部と中央大法学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくることを理解しておきたい。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、中央大法学部の方が良い。
 法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状であるが、「法科の中央」と呼ばれるだけあって、その実績は他の大学を寄せ付けないほどの強さである。この伝統は司法試験勉強においてはかなり有利になると考えてよい。
 実際に進学率も中央大法学部の方が明らかに高く、その大半はロースクールに進学していると考えられるため、勉強仲間の存在など環境面でも中央大が勝っているといっていいだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大法学部がかなり高い。公務員就職であれば中央大法学部が優位といえる。

<主要な就職先の比較>

学習院大学
法学部
中央大学
法学部
みずほフィナンシャルグループ東京都庁
東京都特別区みずほフィナンシャルグループ
三菱東京UFJ銀行りそなホールディングス
三菱UFJ信託銀行三井住友銀行
全日本空輸国税庁
りそなホールディングス三菱東京UFJ銀行
野村証券ワークスアプリケーションズ
三井住友銀行損害保険ジャパン日本興亜
埼玉県市町村埼玉県庁
松屋東京都八王子市役所

 主要就職先を見てみると、双方とも大手金融機関が中心となっている。中央大法学部の方は、高い公務員就職率のため、官公庁も目立つ。双方とも人気企業が並んでおり、就職実績は良好である。

<出世した先輩の多さ>
 社長輩出率、役員輩出率とも中央大が高い。「学閥」を考えた場合は、中央大が優位である。特に「中央大学法学部」であれば、なおさらその傾向は強いと考えて良いだろう。

<上位校との差について>
 前述のように、双方の大学とも就職実績については悪くないといえる。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。入社試験を受けるエントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとGMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶などにチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
中央大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015314,381596,960
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20153824

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、やや学習院大の方が優勢といえる。
 また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、学習院大は27位(18ポイント)、中央大が50位(7ポイント)と、高校現場の印象では、学習院大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、学習院大法学部と中央大法学部を比較してみてきたが、総合してみると、中央大法学部の方が優位と感じられる。やはり入学時の学力差が顕著であり、その差は教育レベルにも影響すると思われるためである(優秀な学生に囲まれて学生生活を過ごすのは、かなり優先順位の高い判断基準となるだろう)。