2017年5月28日日曜日

GMARCH対決:学習院大法学部VS明治大政治経済学部

 GMARCHのくくりの中で比較されることの多い学習院大と明治大。今回は「政治学科」を擁する学習院大法学部と明治大学政治経済学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
大学全体の学部生数(人)大学2015826130538
学部の学生数(人)学部201520664666
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165658
入試難易度(ベネッセ)学部20167072
入学者数(人)学部20165011038
競争入試での入学者(人)学部2016195622
競争入試の割合(%)学部201638.90%59.90%
現役入学者の比率(%)学部201688.477.7

 入試難易度は3社とも明治大政治経済学部が高くなっている。明治大政治経済学部の方が上ということができる。
 さらに、「競争入試の割合」は明治大政治経済学部が高く、一方で学習院大法学部は40%以下と低い。そのことを加味すると、実際の難易度の差はもっと開いていると考えてもいいかもしれない。
(なお、一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。そのため、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)
 よって、明治大政治経済学部の方が「入学時点で優秀な学生が集まっている」といえるだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015424426
学生還元率(%)大学201537.00%52.90%
奨学費(円)大学2015282,939,4391,382,901,203
学生一人当たりの奨学費(円)大学20153425045285
卒業率(%)学部201483.883.9
最寄駅の平均家賃(万円)20166~6.5和泉5.5~6、
駿河台8.5~9

 4年間でかかる学費については、明治大政治経済学部が2万円ほど高い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費など「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、明治大に軍配が上がる。
 なお、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、互角だろうか。明治大の和泉キャンパスの周辺は安いが、3年次以降の駿河台キャンパスの周辺家賃は高い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)についても、ほぼ互角であり、判断材料にはならないだろう。
 以上を総合すると、コスト面ではほぼ互角といっていいだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
キャンパス学部2016目白【都市型】和泉(1~2年)
【中間型】、
駿河台(3~4年)
【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.41.8
4年間退学率(%)学部20143.73.4
入学者の地元占有率(%)学部201638.335.2
女子入学者の割合(%)学部201649.125.7
大学全体の女子学生数(人)大学2016427610545
大学全体の男子学生数(人)大学2016428220289
大学全体の女子学生比率(%)大学201650.00%34.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20111025
受入留学生数(人)学部2015186
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.00%1.80%
長期留学派遣学生数(人)大学20157086
長期留学派遣の割合(%)大学20153.40%1.10%
ST比(人)学部201549.244.4
専任教員数(人)学部201542105
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.39.6

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から比較したい。学習院大法学部は、JR山手線の目白駅から徒歩30秒の利便性抜群の立地にキャンパスを構えている。通常、都市型キャンパスは学生数に対して敷地が狭く、窮屈なイメージがあるが、学習院は例外で、緑の多い広々としたキャンパスで4年間を過ごせる。
 一方で、明治大政治経済学部は1、2年と3、4年でキャンパスが変わる。1、2年次の和泉キャンパスは新宿から京王線特急で1駅と交通の便は良く、学生街として環境は整っている。3年次以降の駿河台は都心部にあるものの、昔ながらの神田学生街の中心となっており、こちらも不便はないといえる。難点を言えば、キャンパスが手狭であり窮屈な印象があることか。
 キャンパスの立地については、はっきり言って甲乙はつけがたいが、キャンパスの広さ等を比較すると、環境的には学習院大が勝っていると言えるだろう。学習院大のキャンパス環境は、私立大学の中でもトップクラスといえるほどである。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は学習院大法学部が低く、4年退学率は明治大政治経済学部の方が低い。双方ともに低い数値であり、互角といえるだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、学習院大が30位(26ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、学部単体の女子学生比率は学習院大法学部が明らかに高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 また、留学生比率については、明治大政治経済学部の方が高く、より国際的な教育環境が整っているといえる。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、互角といえるだろう。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、学習院大に軍配が上がる。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)については、明治大政治経済学部の方が低く、学習院大法学部より「少人数教育」の環境が整っているといえる。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや学習院大が多いが、大差ではない。
 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、学習院大が7人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、学習院大がランク外(3人以下)、明治大が19人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、学習院大は27位(18ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっている。こちらでは、明治大がやや優位のようだ。なお、これらの高校教員向けのアンケートについては、学生数が多い大学が有利になる傾向にあるため、学生数が学習院大の3倍以上の明治大の方が有利な結果が出やすいことは考慮しておいた方が良いだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角か、少しだけ学習院大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
主要企業400社への就職率(%)大学201627.826.7
卒業生数(人)学部20154611087
進学者数(人)学部20152419
進学率(%)学部20155.20%1.70%
公務員就職者数(人)学部20154670
公務員就職比率(%)学部201510.00%6.40%
警察官就職者数(人)大学2015736
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし
(1人以下)
25
CA採用数(人)大学20141211
国会議員の数(人)大学2015716
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
10
社長の数(人)大学201516049580
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.190.31
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
93
上場企業の役員数(人)大学2015146650
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0180.021

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、ほぼ互角という数字が出ている。
 ただし、男子学生のみで考えると、明治大政治経済学部が優勢かもしれない。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。学習院大は女子学生比率が高く、この数字が高く出やすい。そのため、男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、明治大が上といえよう。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、学習院大法学部と明治大政治経済学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくることを理解しておきたい。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学・政治学系の学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、学習院大法学部の方がよさそうだ。
 法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状である。
 例えば、学習院大法学部の優秀層は東大・一橋・慶應などの上位ロースクールに進学することになるため、学習院大のロースクールの合格率が低迷しているからといって、学習院大法学部が法曹を輩出していないということはない。
 回りくどくなったが、学部段階で見るべきデータは「大学院進学率」であり、その意味で学習院大法学部の方が明治大政治経済学部と比べて高いため、法曹を目指す学生が多い(=司法試験合格に向けた勉強がしやすい)と考えられる。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、学習院大法学部の方が高い数字が出ており、学習院大法学部の方が優位と言えるだろう。

<主要な就職先の比較>

学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
みずほフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループ
東京都特別区りそなグループ
三菱東京UFJ銀行三菱東京UFJ銀行
三菱UFJ信託銀行野村証券
全日本空輸三井住友海上火災保険
りそなホールディングス三井住友銀行
野村証券東京都特別区
三井住友銀行SMBC日興証券
埼玉県市町村日本郵政グループ
松屋東日本旅客鉄道

 主要就職先を見てみると、双方とも似た結果となっている。双方とも人気企業が並んでおり、悪くはない就職実績だろう。

<出世した先輩の多さ>
 学部単位でも、大学単位でも社長輩出率、役員輩出率ともに明治大(政治経済学部)が高い。「学閥」を考えた場合は、明治大がやや有利といえるだろう。

<上位校との差について>
 前述のように、双方の大学とも就職実績については悪くないといえる。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。入社試験を受けるエントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとGMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶などにチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度学習院大学
法学部
明治大学
政治経済学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015314,381738,498
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20153824

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、やや学習院大の方が優勢といえる。
 また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、学習院大は27位(18ポイント)、明治大が3位(133ポイント)と、高校現場の印象では、明治大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、学習院大法学部と明治大政治経済学部を比較してみてきたが、総合してみると、明治大政治経済学部の方がやや優位と感じられる。キャンパスライフの面では学習院大が優位にも感じるが、「より優秀な学生が集まっているか」の差は大きいように感じる。優秀な学生と机を並べて学修する環境はとても重要である。また、卒業生の活躍度合も明治大が勝っていると考えられることも判断要因の一つである。