2017年7月31日月曜日

早慶対決:慶應義塾大文学部VS早稲田大国際教養学部

 永遠のライバルである慶應義塾大学と早稲田大学。今回はその中で、慶應義塾大文学部と早稲田大国際教養学部の両方に合格した場合は、どちらに進学すべきかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値
単位
数値年度慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
大学全体の学部生数(人)大学20152885542772
学部の学生数(人)学部201534852863
入試難易度(河合塾)学部20166565
入試難易度(駿台)学部20166466
入試難易度(ベネッセ)学部20168081
入学者数(人)学部2016827463
競争入試での入学者(人)学部2016619224
競争入試の割合(%)学部201674.80%48.40%
入試方式の数(競争入試)学部201512
現役入学者の比率(%)学部2016数値なし79

 入試難易度は、早稲田大国際教養学部の2勝1分の数値をとなっている。
 なお、慶應義塾大文学部の方が競争入試の割合が高く、定員も多い。しかし一方で、早稲田大国際教養学部はかなりの部分を留学生が占めるため、競争入試の割合は低く出がちである。これらを考慮すると、偏差値操作の要素としてはプラスマイナスゼロと考えていいだろう。
 したがって、予備校の難易度通りに、入学時の学力については、早稲田大国際教養学部がやや上と考えていいだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値
単位
数値年度慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015455594
学生還元率(%)大学2015128.10%53.80%
奨学費(円)大学20151,583,391,0723,018,401,177
学生一人当たりの奨学費(円)大学20155487470570
卒業率(%)学部201478.272.1
最寄駅の平均家賃(万円)2016
日吉5.0~5.5、
三田8.5~9.0
6.5~7

 4年間でかかる学費については、慶應義塾大文学部が139万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。なお、学生還元率については、大学全体の数値であり、慶應義塾大学医学部による「医療収入」によってきわめて高い数値が出ている。両学部の比較には適さないことを付記しておきたい。
 単純比較が可能であるのは「学生一人当たりの奨学費」であるが、苦学生が多いイメージ通り、早稲田大の方が高額となっている。
 キャンパス周辺の家賃については、慶應大は途中でキャンパスが変わるため純粋に比較はできないが、ほぼ同程度だろうか。もし、キャンパスの徒歩圏内に住むのであれば早稲田の方が4年間トータルでは安く済むだろう。
 なお、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、早稲田大国際教養学部が6%ほど高い。大きな差ではないが、参考になる数値であろう。
 以上の各比較を総合すると、コスト面ではやや慶應義塾大文学部の方がパフォーマンスが高そうだ。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値
単位
数値年度慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
キャンパス学部2016日吉(1年)
【郊外型】
三田(2~4年)
【都市型】
早稲田【都市型】
1年以内退学率(%)学部201410.8
4年間退学率(%)学部20141.64.8
入学者の地元占有率(%)学部2016数値なし35
大学全体の
首都圏出身比率(%)
大学201557.161.8
女子入学者の割合(%)学部2016数値なし60.3
大学全体の女子学生数(人)大学20161024715686
大学全体の男子学生数(人)大学20161848826495
大学全体の女子学生比率(%)大学201635.70%37.20%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学201167156
受入留学生数(人)学部201573715
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20162.10%25.00%
長期留学派遣学生数(人)大学2015247910
長期留学派遣の割合(%)大学20153.40%8.50%
ST比(人)学部201525.339.2
専任教員数(人)学部201513873
一人当たり貸出冊数(冊)大学201527.216.2

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地の比較から。慶應義塾大文学部は1年と2、3、4年でキャンパスが変わる。1年次の日吉キャンパスは「郊外型」というほど田舎ではないが、都心部からは離れる(渋谷から東急線の特急で20分程度かかる)。日吉はベッドタウンとしてのイメージが強く、静かな環境で2年間のキャンパスライフを送れそうだ。とはいいつつも、キャンパスは駅前に位置するため、渋谷や横浜にでるのはかなり便利の良いキャンパスであり、いわゆる「遊びたい学生」にとっても不満はないキャンパスだろう。2年次以降の三田キャンパスは都心部にあり、山手線でいえば最寄り駅は「田町駅」。オフィス街の様相が強いが、学生向けのお店などもそれなりに充実している。
 一方で、早稲田大国際教養学部は、日本有数の学生街を擁する「早稲田」にキャンパスを構え、ここで4年間を過ごす。山手線の内側でありながらも、オフィス街とは分離されているため、学生にとっては過ごしやすい街だろう。
 キャンパスの立地については、「4年間同じキャンパスで学びたい」のか、それとも「途中でキャンパスが変わっても良い」のか、というのが大きな判断基準となるだろう。そのほかは、周辺が大きな学生街となっていることから、早稲田の方が「貧乏学生」に向いているともいえる。逆に慶應の三田キャンパスは日本一のお金持ち地域「港区」の中にあり、お金持ちとの距離が近くなるだろう。(これらの話はあくまで「全体的な傾向」であり、もちろん慶應大の学生にも貧乏学生は数多く存在することは申し添えておきたい)。

<サークル活動について>
 キャンパスライフへの「憧れ要素」の一つであるサークル活動についても気になるところであるが、具体的な数値は持ち合わせていない。しかし、一般には早稲田大の方がサークル活動が盛んと言われている。というもの、慶應大の場合はキャンパスが変わるため、1年生~4年生までの連続したサークル活動が難しいケースが出てくるからだ。実際に3年生になるとサークルを卒業してしまうケースが多々あるようである。一方の早稲田のサークル活動の活性度は日本一と言っても良いくらいで、1~4年生までが一体となってサークル活動を楽しんでおり、上級年次に上がってからも学部のゼミとサークルを両立させている。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、慶應義塾大文学部の方が低い。
 なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、早稲田大が31位(24ポイント)、慶應義塾大が19位(32ポイント)となっており、高校教育の現場においては、慶應大の方がやや「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、大きな違いは留学生比率である。この数値は早稲田大国際教養学部が圧倒的に高い。
 さらに、違いが見えるのは、「地方出身者の割合」が早稲田がやや高いということだろうか。地方出身者にとっては、早稲田大の方が同郷の仲間がいる可能性が高く、学生の輪に溶け込みやすい可能性はある。
 したがって、多様な価値観に触れるという意味では、早稲田大国際教養学部が優位と思われる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、早稲田大に軍配が上がる。特に早稲田大国際教養学部は留学が必須であるため、この件に関しては圧倒的に早稲田大が優位である(ただしお金はかかるが…)。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、慶應義塾大文学部が少なく、「少人数教育」の環境は慶應義塾大文学部が優位といっていいだろう。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、慶應義塾大が大差をつけて勝っているが、これは医学部や薬学部など医療系の学部を抱えていることが影響していると思われ、今回比較している双方の学部生の間では、この数字ほどの差はないと思われる。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、慶應義塾大が40人、早稲田大が47人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、慶應義塾大が6人、早稲田大が40人であり、双方の差し引きを加味すると、高校側の印象では、慶應義塾大の方がより「進学して伸びる大学」と認識されているようだ。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、慶應義塾大は5位(142ポイント)、早稲田大は3位(159ポイント)となっている。こちらでは、早稲田大がやや優位のようだ(といっても、誤差の範囲ともいえる)。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、全体的にはほぼ互角と言っていいだろう。留学を重視するか、少人数教育を重視するか、サークルを重視するかなど、キャンパスライフで何を重視するかによって、事情は変わってくるであろう。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値
単位
数値年度慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
主要企業400社への就職率(%)大学201646.937.4
卒業生数(人)学部2015778676
進学者数(人)学部20159465
進学率(%)学部201512.10%9.60%
公務員就職者数(人)学部20153912
公務員就職比率(%)学部20155.00%1.80%
警察官就職者数(人)大学2015数値なし14
国家公務員総合職(人)大学201592140
CA採用数(人)大学2014数値なし24
国会議員の数(人)大学20158779
上場企業の社長数(人)学部20067数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学20151170310993
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.410.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201521531878
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0750.044

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、慶應大の方が高い結果が出ている。
 いわゆる学歴フィルターにおいて両者に差がつくことは考えられないため、結局はどちらの大学に行くかということよりも、「いかに充実した大学生活を送るか」が重要となってくるだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、慶應義塾大文学部の方が高い。これは学生の志向の問題であると考えられる(国際志向の強い人が、国際的な仕事に就きたい場合、外交官や国連などの国際公務員という選択肢はなかなか門が狭いためである)。

<主要な就職先の比較>

慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
みずほフィナンシャルグループ楽天
東京海上日動火災保険日本IBM
三井住友銀行三井住友銀行
三菱東京UFJ銀行三菱東京UFJ銀行
東京都日本航空
第一生命保険三菱商事
三菱UFJ信託銀行東京海上日動火災保険
みずほフィナンシャルグループ
全日本空輸グループ
博報堂

 主要就職先は、早稲田大国際教養学部の方がグローバル企業が多い印象がある。特に航空会社が入っているのはその例であろう。早稲田大国際教養学部で就職できて、慶應義塾大文学部で就職できない会社はないだろうし、その逆もしかりである。主要就職先の比較はあくまで参考程度として見ていただきたい。
 ただし、慶應が強い業界・会社、早稲田が強い業界・会社の区分けもよく見るとあったりするので、目指す業界が決まっているのであれば、両学部のそれらの業界・企業の就職実績を調べてみるのも良いだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、やはり慶應義塾大文学部が強い。言ってみれば早稲田大国際教養学部と慶應義塾大文学部の一番の違いは「学閥」にあるのかもしれない。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういう意味で、「上場企業の役員になりやすさ」等は慶應義塾大の方が明らかに高く、もし出世を期待するのであれば慶應義塾大文学部の方が少しは有利かもしれない。もちろん、企業によって事情は異なるし、早稲田大も有数の社長・役員輩出大学であり、不利になることは決してない。あくまでも慶應の財界での強さが「際立っている」ということである。

<上位校との差について>
 双方の大学とも就職実績については良好といえる。しかし一方で、「東大・京大・一橋」との差は、出世段階で出てきている。
 両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶出身者が出世できる可能性が東大・京大出身と比べて低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値
単位
数値年度慶應義塾大学
文学部
早稲田大学
国際教養学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015903,7281,474,478
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20153134

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、やや早稲田大の方が優勢となっているが、その差は大きくはない。
 さらに優劣をつけるのであれば、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、慶應義塾大が9位(58ポイント)、早稲田大が8位(104ポイント)と、高校現場の印象でも、早稲田大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、慶應義塾大文学部と早稲田大国際教養学部を比較してみてきた。ほとんど互角であるが、強いて優劣をつけるのであれば早稲田大国際教養学部がやや優位だろうか。ただし、文学部同士の比較ではないため、両学部には教育内容の違いがかなりある。今回の比較においては、教育内容には触れていないため、両学部の比較においてはぜひ、教育内容についてもじっくり吟味していただきたい。
 なお、実際に両方に合格した人の選択を見てみると、慶應義塾大文学部に進学した人が27%、早稲田大国際教養学部に進学した人が73%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。