2017年4月4日火曜日

産近甲龍対決:京都産業大理学部VS近畿大理工学部

 今回の比較対象は、「産近甲龍」のなかで比べられることの多い、京都産業大と近畿大。その中で、京都産業大理学部と近畿大理工学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。



「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20151288831586
学部の学生数(人)学部20154034524
入試難易度(河合塾)学部201647.552.5
入試難易度(駿台)学部20164649
入試難易度(ベネッセ)学部20165360
入学者数(人)学部20161261112
競争入試での入学者(人)学部201672708
競争入試の割合(%)学部201657.10%63.70%
現役入学者の比率(%)学部201691.379.5

 入試難易度は3社とも近畿大理工学部が上の数値を出している。それも、結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、近畿大理工学部に軍配が上がる。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015573593
学生還元率(%)大学201533.60%42%以下
奨学費(円)大学2015360,491,399数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201527971数値なし
卒業率(%)学部201477.480.8
最寄駅の平均家賃(万円)20164~4.53~3.5

 4年間でかかる学費については、京都産業大理学部が20万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 一方で、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、近畿大の方がやや安い。下宿コストについては近畿大の方がかからないだろう。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、3%ほど京都産業大理学部が高いが、ほとんど差がないため優劣はつけられない。
 上記を総合すると、コスト面をトータルでみれば京都産業大理学部がやや優位といえる。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
キャンパス学部2016神山【中間型】東大阪【中間型】
1年以内退学率(%)学部201401.8
4年間退学率(%)学部20147.17.6
入学者の地元占有率(%)学部201627.855.8
女子入学者の割合(%)学部20162713.4
大学全体の女子学生数(人)大学201640129752
大学全体の男子学生数(人)大学2016879422570
大学全体の女子学生比率(%)大学201631.30%30.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし
(2人以下)
数値なし
(2人以下)
受入留学生数(人)学部2015323
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.70%0.50%
長期留学派遣学生数(人)大学20159610
長期留学派遣の割合(%)大学20153.00%0.10%
ST比(人)学部201513.428.1
専任教員数(人)学部201530161
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.38.6

<キャンパスの立地>
 京都産業大理学部は京都市内の地下鉄国際会館駅からバスで約10分の「神山キャンパス」で4年間を過ごす。交通の便は良いとは言えないが、その分、広々したキャンパスで、周囲は京都の落ち着いた雰囲気を感じつつ、学生生活を送ることができる。付近に店はあまりないため、歓楽街などはキャンパスから少し離れた場所まで繰り出すことになるが、京都市内の大学の大半は同じなので、デメリットではないだろう。
 一方の近畿大理工学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅から徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
 キャンパスの立地については、甲乙つけがたい。京都産業大の神山キャンパスの緑に囲まれた環境も魅力的ではあるし、近畿大の学生街も魅力的である。結局は両方に足を運んで実際に自分の目で見た方がいいかもしれない。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、京都産業大理学部の方が低い。ただし、僅差であるため判断材料にはならないだろう。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率は学部単位では京都産業大理学部が14%ほど高い。専攻によって多少の違いはあるだろうが、教室内の雰囲気は京都産業大理学部が華やかであるだろう。
 また、留学生比率については、京都産業大理学部が勝っている。国際的な学習環境は京都産業大理学部の方が整っているといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、京都産業大に軍配が上がる。近畿大と比べて30倍の留学生派遣比率であり、かなり差がある。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、注目したい数値であり、一つの判断材料にもなりうるだろう。ただし、理系学部の場合は、この数値より派遣比率は低くなっていると思われるため、学部単位の比較では見かけの数値差ほどの差はないかもしれない。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、京都産業大理学部の方が低い。「少人数教育」の環境は京都産業大理学部の方が整っているといえる。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、京都産業大の方が勝っている。
 その他の比較としては、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、京都産業大は47位(11ポイント)、近畿大は21位(24ポイント)となっている。高校からの評価では、近畿大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、京都産業大理学部が優勢といえるだろうか。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201611.710%以下
卒業生数(人)学部201581999
進学者数(人)学部201513208
進学率(%)学部201516.00%20.80%
公務員就職者数(人)学部2015248
公務員就職比率(%)学部20152.50%4.80%
警察官就職者数(人)大学20157195
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし
(1人以下)
2
CA採用数(人)大学2014数値なし
(8人以下)
数値なし
(8人以下)
国会議員の数(人)大学201502
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201521366243
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.170.20
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201587139
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0070.004

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、京都産業大は2ケタ以上の数値を誇っており、近畿大と比較して優れているといえる。ただし、理系の場合は大学院進学率もそれなりに高いため、この差は文系中心の話であり、理系の場合は参考程度にとらえていただきたい。

<大学院に進学する>
 進学率は、近畿大理工学部の方が高い。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、より幅広い学問分野を扱う近畿大と、分野を絞っている京都産業大とで単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、近畿大理工学部の方が高い数字を誇っている。公務員就職のケースは教員が多いようである。

<主要な就職先の比較>

京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
メイテック大阪府教育委員会
大阪ガスきんでん
大阪府教育委員会ジェイテクト
京都信用金庫明治
積水ハウスNTN
西日本旅客鉄道西日本旅客鉄道
野村証券ローム
富士通ゼネラル関西電力
三菱電機システムサービス大阪ガス
和歌山県庁西日本電信電話

 主要就職先は、双方とも文系就職と似た印象がある。研究職として就職を目指すなら、やはり大学院進学すべきであろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、社長輩出率は近畿大、役員輩出率は京産大が上の数字となっており、学閥的にはほぼ互角と考えていいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
近畿大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015225,533495,208
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151716

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、京都産業大が僅かに勝っているが、ほとんど差はない。互角といっていいだろう。
 しかし、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、京都産業大大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象では、近畿大が改革のイメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、京都産業大理学部と近畿大理工学部を比較してみてきた。全体としては、ほぼ互角といっていいだろう。入試難易度は近畿大理工学部が優位であるため、近畿大を選ぶケースが多いだろうが、キャンパスライフの充実度や学費のことを考えると、安易に入試難易度だけで選ぶのはもったいないような気もする。キャンパスの立地の項でも書いたが、実際に両校のキャンパスを訪問してみて、どちらが自分にとってより充実した学生生活を送れるかイメージした上で進学する大学を選択すると良いだろう。
 そして、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。