2017年4月13日木曜日

GMARCH対決:学習院大理学部VS中央大理工学部

 今回の比較対象は、GMARCHのくくりの中で比較されることの多い学習院大と中央大。その中で、学習院大理学部と中央大理工学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学2015826125080
学部の学生数(人)学部20159514101
入試難易度(河合塾)学部20165557.5
入試難易度(駿台)学部20165253
入試難易度(ベネッセ)学部20166467
入学者数(人)学部2016220899
競争入試での入学者(人)学部2016150564
競争入試の割合(%)学部201668.20%62.70%
現役入学者の比率(%)学部201677.378.3

 入試難易度は、3社とも中央大理工学部が上の数値となっている。
 なお、「競争入試の割合」は学習院大理学部の方が高いが、大きな差ではないため、予備校の難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。そのため、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015630636
学生還元率(%)大学201537.00%35.70%
奨学費(円)大学2015282,939,4391,245,994,977
学生一人当たりの奨学費(円)大学201534,25049,681
卒業率(%)学部201484.382.5
最寄駅の平均家賃(万円)20166~6.57.5~8

 4年間でかかる学費については、学習院大理学部が6万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 学生還元率は学習院大が高く、一人当たりの奨学費は中央大が高い。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、互角といえる。
 なお、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、学習院大の近辺の家賃が安い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、2%程度、中央大理工学部の方が高いが、誤差の範囲内であろう。
 以上を総合すると、コスト面ではやや学習院大理学部が優勢だろうか。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
キャンパス学部2016目白【都市型】後楽園【都市型】
1年以内退学率(%)学部20141.31
4年間退学率(%)学部20143.94.7
入学者の地元占有率(%)学部201634.532.4
女子入学者の割合(%)学部201635.923.2
大学全体の女子学生数(人)大学201642769064
大学全体の男子学生数(人)大学2016428215757
大学全体の女子学生比率(%)大学201650.00%36.50%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011102238
受入留学生数(人)学部2015065
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.00%1.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20157085
長期留学派遣の割合(%)大学20153.40%1.40%
ST比(人)学部201514.922.2
専任教員数(人)学部201564185
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.34.8

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から比較したい。学習院大理学部は、JR山手線の目白駅から徒歩30秒の利便性抜群の立地にキャンパスを構えている。通常、都市型キャンパスは学生数に対して敷地が狭く、窮屈なイメージがあるが、学習院は例外で、緑の多い広々としたキャンパスで4年間を過ごせる。
 一方の中央大理工学部は、東京ドーム近くの後楽園キャンパスで4年間を過ごすことになり、文系と違って「都市型キャンパス」である。
 キャンパスの立地については、文系と違って優劣はつけがたい。ただし、多くの学部が同一キャンパスであることを加味すると、学習院大が勝っていると言えるだろう。やはり文系学部生との交流も学生生活の上で重要だと思われるためだ(学生時代に多様な価値観に触れることは大切である)。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、4年退学率は学習院大理学部が低い。ただし、中央大理工学部も高くはなく、判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、学習院大が30位(26ポイント)、中央大が20位(29ポイント)となっており、高校教育の現場においては、中央大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単体、大学全体の双方とも女子学生比率は学習院大理学部が高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 また、留学生比率については、中央大理工学部の方が高く、中央大理工学部の方が国際的な教育環境が整っているといえる。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、互角といえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、学習院大に軍配が上がる。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)については、学習院大理学部の方が低い。「少人数教育」の環境は学習院大理学部が勝っている。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、学習院大が多い。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、学習院大が7人、中央大が19人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、学習院大がランク外(3人以下)、中央大が10人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところであろうか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、学習院大は27位(18ポイント)、中央大は28位(17ポイント)となっている。こちらも、ほぼ互角と言っていいだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや学習院大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201627.823.3
卒業生数(人)学部2015225922
進学者数(人)学部201573365
進学率(%)学部201532.40%39.60%
公務員就職者数(人)学部2015958
公務員就職比率(%)学部20154.00%6.30%
警察官就職者数(人)大学2015728
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)48
CA採用数(人)大学20141213
国会議員の数(人)大学2015731
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201516048534
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.190.34
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)63
上場企業の役員数(人)大学2015146969
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0180.039

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、学習院大の方が4%ほど高い数字が出ている。
 ただし、男子学生のみで考えると、その差はほとんどないと考えていいだろう。というもの、主要400社の就職率データには「一般職」での就職が含まれており、その場合は「総合職」より入社しやすい傾向がある。学習院大は女子学生比率が高く、この数字が高く出やすい。そのため、男子学生で「一般職」を選ぶケースはほぼないと考えられることから、「総合職」として400社に就職できる可能性は、ほとんど変わらないのではないかと推測される。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、学習院大理学部と中央大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくることを理解しておきたい。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、中央大理工学部の方が高い。ただし、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大理工学部が高い。公務員就職においては、中央大理工学部が優位といえる。

<主要な就職先の比較>

学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
埼玉県教育委員会東京都庁
東京都特別区東京都教育委員会
神奈川県教育委員会SCSK
アメリカンファミリーライフ
アシュアランスカンパニーオブコロンバス
日本電気
大成建設キヤノン
東日本旅客鉄道日立システムズ
みずほフィナンシャルグループ東日本旅客鉄道
東京都教育委員会東日本電信電話
埼玉県市町村千葉県庁
北海道電力神奈川県横浜市役所

 主要就職先を見てみると、双方とも上位は公務員就職である。どちらも安定企業が名を連ねており、良好な就職実績といっていいだろう。

<出世した先輩の多さ>
 社長輩出率、役員輩出率とも中央大が高い。中央大の場合は看板学部の法学部の影響が大きいものの、「学閥」を考えた場合は、中央大が優位であろう。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、学習院大や中央大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度学習院大学
理学部
中央大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015314,381596,960
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20153824

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、やや学習院大の方が優勢といえる。
 また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、学習院大は27位(18ポイント)、中央大が50位(7ポイント)と、高校現場の印象では、学習院大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、学習院大理学部と中央大理工学部を比較してみてきたが、総合してみると、中央大理工学部の方が僅かばかり優位と感じられる。入学時の学力差やキャンパスの立地が文系と比べて大差がないこと、進路面でやや中央大理工学部が優位であることなどがその判断理由である。
 しかし、最後に強調したいのは、「理系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。