2017年4月23日日曜日

MARCH対決:法政大法学部VS明治大法学部

 ともに東京六大学の一員、そしてMARCHの一員として知られる、法政大と明治大。今回は両校の「法学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度法政大学
法学部
明治大学
法学部
大学全体の学部生数(人)大学20152711030538
学部の学生数(人)学部201534133697
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165558
入試難易度(ベネッセ)学部20166973
入学者数(人)学部20161035961
競争入試での入学者(人)学部2016690715
競争入試の割合(%)学部201666.70%74.40%
入試方式の数(競争入試)学部201545
現役入学者の比率(%)学部201683.180.3

 入試難易度は3社とも、明治大法学部が上の数値を出している。これだけ明確な結果であれば、偏差値的には明治大法学部が上であると判断できる。
 また、「競争入試の割合」も明治大法学部の方が有意に高いことを勘案しても、明治大法学部の入学者の方が「全体として学力が上」という結論に至る。
(MARCHクラスの大学では、競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。偏差値操作の実態を加味するため、本ブログでは競争入試の割合を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度法政大学
法学部
明治大学
法学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015432426
学生還元率(%)大学201538.00%52.90%
奨学費(円)大学2015994,270,1471,382,901,203
学生一人当たりの奨学費(円)大学20153667545285
卒業率(%)学部20148387.3
最寄駅の平均家賃(万円)20168.5~9和泉5.5~6、
駿河台8.5~9

 4年間でかかる学費については、明治大法学部が6万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率や一人当たりの奨学費は明治大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、明治大に軍配が上がりそうだ。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、明治大は途中でキャンパスが変わるため単純比較は難しいが、4年間トータルではさほど差は出ないだろう。(そもそも都心のキャンパスは徒歩圏内に住む学生は少ないだろうが、大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、法政大法学部が4%ほど高いが、差は大きくないため判断材料にはならないだろう。
 以上を総合すると、コストパフォーマンス的には明治大が有利か。しかし、その差は「決定打」となるものではなく、一つの選択材料という程度であろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度法政大学
法学部
明治大学
法学部
キャンパス学部2016市ヶ谷【都市型】和泉(1~2年)
【中間型】、
駿河台(3~4年)
【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.81.7
4年間退学率(%)学部201431.8
入学者の地元占有率(%)学部201624.734.6
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201561.663.9
女子入学者の割合(%)学部201637.133.3
大学全体の女子学生数(人)大学20161050910545
大学全体の男子学生数(人)大学20161806720289
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.80%34.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学201165
受入留学生数(人)学部20153435
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.00%0.90%
長期留学派遣学生数(人)大学20157286
長期留学派遣の割合(%)大学20151.10%1.10%
ST比(人)学部201552.543.5
専任教員数(人)学部20156585
一人当たり貸出冊数(冊)大学20157.49.6

<キャンパスの立地>
 法政大法学部は市ヶ谷にキャンパスを構えている。ボアソナードタワーを中心として、都市型キャンパスではあるが、周辺はオフィス街の雰囲気が強く、「学生街」としてのイメージはない。とはいうものの、神楽坂が徒歩圏内であったりと、利便性が悪いとも言えない。4年間ずっとこのキャンパスに通えることを考えたら、キャンパスの立地としては良い部類に入るだろう。
 一方で、明治大法学部は1、2年と3、4年でキャンパスが変わる。1、2年次の和泉キャンパスは新宿から京王線特急で1駅と交通の便は良く、学生街として環境は整っている。3年次以降の駿河台は都心部にあるものの、昔ながらの神田学生街の中心となっており、こちらも不便はないといえる。
 キャンパスの立地については、甲乙つけがたいが、4年間同じキャンパス、それも都心部にキャンパスを構えるということで、法政大法学部がわずかながら優位か。というのも、4年間キャンパスが同じであるメリットとしてサークル活動のしやすさ、先輩後輩のつながりの強さが挙げられ、そのメリットは侮れないと考えるためである。もっともこの考え方は、その人の価値観次第であり、例えば「引っ越しが好き」というような人も世の中にはいて、環境が変わることを望む人などは明治大法学部の方がキャンパス立地的に優れていると考える人もいるかもしれない。このように、自分がどちらの考え方を持つかによって、優劣は変わってくる。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、明治大法学部の方が低い。しかし、法政大法学部も数値としては低いため、判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、法政大は18位(35ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、女子学生の比率については、法政大法学部がやや高いが、差は大きくない。
 一方で、学部の地元占有率、大学全体の首都圏出身比率は、法政大が少し低く、地方出身者の割合は法政大の方が多い特徴がある。とはいうものの、ほとんど誤差の範囲で、双方の大学とも全国各地から学生が集っているといえそうだ。
 なお、留学生比率については法政大法学部がやや高いが、ほとんど差はないため、国際的な教育環境という意味では、互角といっていいだろう。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、互角である。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、明治大法学部が低く、「少人数教育」の環境としては明治大法学部が勝っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや明治大が多い。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、法政大が6人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、法政大が17人、明治大が19人であり、高校側の印象では、明治大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ(法政大は「伸び悩んだ」という印象が強いのが、気になる材料ではある…)。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、法政大は47位(11ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっており、同じように、明治大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角だろうか。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度法政大学
法学部
明治大学
法学部
主要企業400社への就職率(%)大学201622.526.7
卒業生数(人)学部2015744861
進学者数(人)学部20153260
進学率(%)学部20154.30%7.00%
公務員就職者数(人)学部2015118137
公務員就職比率(%)学部201515.90%15.90%
警察官就職者数(人)大学20155736
国家公務員総合職(人)大学2015625
CA採用数(人)大学20142011
国会議員の数(人)大学20151116
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201569719580
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.260.31
上場企業の役員数(人)学部20066254
上場企業の役員数(人)大学2015341650
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0130.021

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、明治大の方が高い数字が出ている。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、明治大法学部と法政大法学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。
(法政大学キャリアデザイン学部の筒井美紀氏は著書で「大学選びよりゼミ選びが100倍大切」と言っているほどで、進学した大学で何をやるかが重要である)

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、明治大法学部の方がよさそうだ。
 法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状である。
 例えば、明治大法学部の優秀層は東大・一橋・慶應などの上位ロースクールに進学することになるため、明治大のロースクールの合格率が低迷しているからといって、明治大法学部が法曹を輩出していないということはない。
 回りくどくなったが、学部段階で見るべきデータは「大学院進学率」であり、その意味で明治大法学部の方が法政大法学部と比べて高いため、法曹を目指す学生が多い(=司法試験合格に向けた勉強がしやすい)と考えられる。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、同値であり、双方とも高い。公務員になることを想定しているのであればどちらでも良いだろう。

<主要な就職先の比較>

法政大学
法学部
明治大学
法学部
都道府県庁国家公務員
東京都特別区東京都特別区
警視庁みずほフィナンシャルグループ
政令指定都市三菱東京UFJ銀行
みずほフィナンシャルグループSMBC日興証券
三井住友銀行東京都庁
日本生命保険三井住友銀行
千葉銀行りそなグループ
みずほ証券警視庁
日本郵政グループ国税庁(国税専門管)

 主要就職先については、双方ともかなり似ており、公務員と大手金融機関が多くなっている。両者に明確な差は見られない。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学の名門学部であり、上場企業の役員などを「学部単体」でも数多く輩出しているが、より明治大の方が輩出実績は高い。ただし、明確な差があるわけではなく、明治大の方がやや優勢というくらいのものであろう。

<上位校との差について>
 双方の大学とも就職実績については良好であるが、一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。エントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社など一部の業界などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶以上の大学にチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度法政大学
法学部
明治大学
法学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015446,556738,498
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151624

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、明治大が優勢である。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、明治大が6位(130ポイント)となっており、全般的な「改革力」としては明治大が勝っているようだ。

<まとめ>
 以上、法政大法学部と明治大法学部を比較してみてきたが、全体の印象としては明治大法学部の方が優勢である。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、明治大法学部に進学した人が98%、法政大法学部に進学した人が2%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。