なお、今回の比較においては、恐らく早稲田大法学部の方が上との評価になろうが、例えば、中大法学部に合格した受験生が、満足できずに一浪してまで早稲田大法学部を目指すべきかどうかについてみていきたいと思う。
※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 25080 | 42772 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 6158 | 3505 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 62.5 | 67.5 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 63 | 67 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 79 | 81 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 1523 | 788 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 728 | 427 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 47.80% | 54.20% |
入試方式の数(競争入試) | 学部 | 2015 | 7 | 2 |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 81.5 | 81.3 |
入試難易度は、3社とも早稲田大法学部が上の数値となっている。入学時の学力差においては、早稲田大法学部が上であることは疑いようのない事実であろう。
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 421 | 436 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 35.70% | 53.80% |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 1,245,994,977 | 3,018,401,177 |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 49,681.0 | 70,570.0 |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 86.2 | 79.7 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 4.5~5 | 6.5~7 |
4年間でかかる学費については、中央大法学部が15万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
しかし一方で、学生還元率、一人当たりの奨学費は早稲田大が上である。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、早稲田大に軍配が上がる。
キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、中央大の方が安く、一人暮らしのコストは中央大の方が安くなるだろう(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、早稲田大法学部が7%程度高く、それなりの差がある。一つの判断材料になるかもしれない。
以上を加味すると、全般的なコストパフォーマンスは、中央大法学部が優位といえるだろう。
なお、この差については、法曹を目指す学生にとっては重要な差かもしれない。仮に早稲田には落ちて、中大には受かった場合に浪人するかどうかは、費用対効果がかなり違ってくる。この意味での「効果」は司法試験合格であろうが、中大ロースクールと早大ロースクールの評価の差はあまりないのが実情である。また、中大法学部から早稲田大のロースクールに進学するケースも少なくないため、浪人しても効果はあまり違いがないだろう。したがって、強い法曹志望者であれば浪人はせずに中央大に入学した方が良いかもしれない。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 多摩【郊外型】 | 早稲田【都市型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 1.3 | 0.3 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 3.1 | 1.8 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 33.3 | 38.7 |
大学全体の首都圏出身比率(%) | 大学 | 2015 | 56.1 | 61.8 |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 42.2 | 36.3 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 9064 | 15686 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 15757 | 26495 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 36.50% | 37.20% |
女性ファッション誌登場人数(人) | 大学 | 2011 | 238 | 156 |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 9 | 64 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 0.10% | 1.80% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 85 | 910 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 1.40% | 8.50% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 56.5 | 47.4 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 109 | 74 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 4.8 | 16.2 |
<キャンパスの立地>
早稲田大法学部は、日本有数の学生街を擁する「早稲田」にキャンパスを構え、ここで4年間を過ごす。山手線の内側でありながらも、オフィス街とは分離されているため、学生にとっては過ごしやすい街だろう。
一方の、中央大法学部は、東京都八王子市の多摩キャンパスで4年間を過ごすことになり、いわゆる典型的な「郊外型キャンパス」である。広々とした環境で4年間を過ごせるが、「都会に出たい」といって上京する学生にとってはやや、物足りないと思うかもしれない。勉強をきっちりやりたい学生にとってはうってつけのキャンパスであろう。
キャンパスの立地については、ほとんどの高校生は、早稲田大の方が魅力的に映るだろうが、法曹志望の学生に限って言えば、中央大学法学部の学習環境も捨てがたいのも事実である。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、早稲田大法学部の方が低い結果となっている。
なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、中央大が20位(29ポイント)、早稲田大はランク外(24ポイント以下)となっており、高校教育の現場における「面倒見の良さ」の印象は中央大が勝っている。
<学生の属性>
女子学生比率については、学部単位では中央大法学部が6%ほど高い。また、首都圏出身学生比率については、大学全体で5%ほど中央大が高く、より全国から学生が集まっているといえる。
一方で、留学生比率については、早稲田大法学部の方が高く、国際色豊かな教育環境という意味では、早稲田大法学部が優れているといえる。
<教育面>
次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、早稲田大に軍配が上がりそうだ。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、早稲田大法学部が低く、「少人数教育」の環境としては早稲田大法学部がやや優位といえる。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、早稲田大が明らかに多い。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントである。
実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、早稲田大が47人、中央大が19人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、早稲田大が40人、中央大が10人であり、高校側の印象では、早稲田大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、早稲田大は3位(159ポイント)となっており、同じように、早稲田大がやや優位のようだ。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、早稲田大法学部が優勢である。しかし、浪人してまで目指すべきである、というような差は感じられない。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 23.3 | 37.4 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 1446 | 842 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 213 | 130 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 14.70% | 15.40% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 254 | 117 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 17.60% | 13.90% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 28 | 14 |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 48 | 140 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 13 | 24 |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 31 | 79 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 23 | 23 |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 8534 | 10993 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.34 | 0.26 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 186 | 232 |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 969 | 1,878 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.039 | 0.044 |
<大企業に入りたい>
大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、早稲田大の方が14%ほど高い。
<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
法学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望する場合は、ほぼ互角とみていいだろう。
法科大学院(ロースクール)が設立されて以後、大学別の司法試験合格者ランキングは当然のように「大学院」の数字となっており、学部レベルでのランク付けは難しくなっているのが現状であるが、「法科の中央」と呼ばれるだけあって、司法試験受験者・ロースクール進学準備のサポート体制の手厚さは日本一と言っても良い(学内に格安の予備校を抱えているほどである)。
一方で、進学率はほぼ同じであり、早稲田大のメリットとしては優秀な学生に囲まれて司法試験準備に臨めることであろう。優秀な勉強仲間の存在は大きいと思われる。
したがって、法曹志望の場合は「中大にしか受からなかったから浪人して早稲田を目指す」という選択肢は取らなくても良いような気がする。
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、中央大法学部がかなり高い。公務員になることを想定しているのであれば、浪人せずに中央大法学部を選択するという判断もありである。
ただし、国家公務員総合職を目指すのであれば早稲田大法学部をお勧めする。これまでの合格実績がかなりあり、各省庁に散らばっているOBの存在が、試験勉強時、入省後も有利に働くであろう。中央大法学部の実績も悪いわけではないが、やはり早稲田大と比べると見劣りしてしまうのが現実である。
<主要な就職先の比較>
中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
東京都庁 | 東京都職員Ⅰ類 |
みずほフィナンシャルグループ | 国家公務員一般職 |
りそなホールディングス | 三井住友銀行 |
三井住友銀行 | 国家公務員総合職 |
国税庁 | みずほフィナンシャルグループ |
三菱東京UFJ銀行 | 日本放送協会(NHK) |
ワークスアプリケーションズ | 三菱東京UFJ銀行 |
損害保険ジャパン日本興亜 | 東京海上日動火災保険 |
埼玉県庁 | 特別区(東京23区)職員 |
東京都八王子市役所 | りそなグループ |
主要就職先については、公務員と大手金融機関が多いのは似ており、就職先だけの比較では明確な差は感じられない。全体的にはどちらも就職状況は良好といえるが、「早慶」と「GMARCH」の間で学歴フィルターをかけている企業があるのは周知の事実である。主観を交えていうなれば、民間企業に就職を目指し、その中でも超人気企業を目指す場合は、浪人してでも早稲田大法学部に入った方が良いと思われる。
<出世した先輩の多さ>
双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出しているが、学閥面では早稲田大がやや勝っている。しかし、浪人するまでの差があるかと言えばそうではないだろう。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 中央大学 法学部 | 早稲田大学 法学部 |
国からの特別補助金支給額 (千円) | 大学 | 2015 | 596,960 | 1,474,478 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 24 | 34 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、早稲田大がやや優勢となっている。
別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、中央大はランク外(21位以下)、早稲田大は8位(104ポイント)と、早稲田大が勝っている。
<まとめ>
以上、早稲田大法学部と中央大法学部を比較してみてきた。実際に両方に合格した人の選択を見てみてみると、早稲田大法学部に進学した人が96%、中央大法学部に進学した人が4%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。とはいうものの、本ブログにおいては、今回はダブル合格ではなく、「中大法学部に合格した人が浪人してまでも早稲田を目指すべきか」という観点から考えてみた。その結果は、民間企業のうち学歴フィルターを伴う「超難関企業」(総合商社、外資系金融など)を目指す場合であれば「浪人すべき」という結論であり、法曹や公務員、普通の大企業を目指す場合は、「浪人はしなくても良い」という結論である。いろいろ異論はあるであろうが、あくまで筆者の主観としてとらえていただければ幸いである(少なくとも自分の子供が同じような状況に置かれた場合は、上記のアドバイスをするつもり、ということです)。