2017年4月19日水曜日

関関同立対決:関西大化学生命工学部VS関西学院大理工学部

 今回の比較対象は、「関関同立」の中のライバル校同士である関西大と関西学院大。関西大学化学生命工学部と関西学院大学理工学部の両方に合格した場合、どちらに進学した方が良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152864223122
学部の学生数(人)学部201515022132
入試難易度(河合塾)学部20165552.5
入試難易度(駿台)学部20165255
入試難易度(ベネッセ)学部20166264
入学者数(人)学部2016366796
競争入試での入学者(人)学部2016226450
競争入試の割合(%)学部201661.70%56.50%
現役入学者の比率(%)学部2016数値なし77

 入試難易度は関西学院大理工学部の2勝1敗という結果となっている。河合塾は関西大が上の数値であるものの、「ベネッセ」と「駿台」は関西学院大理工学部の方が上の数値を出している。「競争入試の割合」は関西大化学生命工学部がやや高いが、僅差である。入学時の学力としてはかなり僅差で関西学院大学理工学部の方が上といえようか。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015630544
学生還元率(%)大学201540.20%35.10%
奨学費(円)大学20151,501,165,119996,236,718
学生一人当たりの奨学費(円)大学20155241143086
卒業率(%)学部201484.372
最寄駅の平均家賃(万円)20163.5~43.5~4

 4年間でかかる学費については、関西学院大理工学部の方が86万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 なお、学生還元率や一人当たりの奨学費では関西大が優勢となっている。
 一方、一人暮らしをする場合のキャンパス周辺の家賃を考えてみると、ほぼ互角である。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、関西学院大理工学部が13%ほど高い。この差は小さい差ではなく、判断材料の一つになりうる数値である。
 以上の通り、コスト面では、学費の差が大きいため関西学院大理工学部が優勢と言っていいかとは思うが、留年率の高さは気になるところではある。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
キャンパス学部2016千里山【中間型】神戸三田【郊外型】
1年以内退学率(%)学部20140.31.9
4年間退学率(%)学部20145.68.4
入学者の地元占有率(%)学部201654.436.5
女子入学者の割合(%)学部201630.326
大学全体の女子学生数(人)大学20161139811390
大学全体の男子学生数(人)大学20161717012108
大学全体の女子学生比率(%)大学201639.90%48.50%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20111745
受入留学生数(人)学部2015712
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.50%0.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20152496
長期留学派遣の割合(%)大学20150.30%1.70%
ST比(人)学部201527.816.3
専任教員数(人)学部201554131
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.312.6

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。関西大化学生命工学部は、大阪のターミナル駅梅田から電車で25分、阪急千里線の関大前駅から徒歩5分の「千里山キャンパス」で4年間を過ごす。周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。利便性の高いキャンパスと言えるだろう。
 一方の、関西学院大理工学部は、JR宝塚線三田駅または神戸電鉄公園都市線南ウッディタウン駅からバスで10分強の場所にある「神戸三田キャンパス」で4年間を過ごす。「神戸」と名がついているが、郊外キャンパスであり、交通アクセスはあまり良いとは言えない。周囲は新興住宅地であり、街並みは綺麗であるが、学生街などはない。しかし、キャンパスは関西学院大のオシャレなイメージを体現したような、綺麗な建物が並ぶ。アクセス面以外では大きなマイナス面のないキャンパスである。
 キャンパスを比較すると、アクセス面での差が大きいため、全般的には関西大が優位だろうか。しかし、関西学院大のキャンパスの雰囲気も捨てがたいため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、関西大化学生命工学部の方が低い数値となっている。この数値は理系学部としては極めて低い数値であり、関西大のプラスポイントといっていいだろう。
 なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、関西大は36位(19ポイント)、関西学院大は上位50位以下のランク外(14ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、関西大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、学部単位の男女比については、関西大化学生命工学部の方が4%程度高いが、大きな差ではない。
 また、外国人留学生の比率については、関西学院大理工学部が少しだけ高いが、教室内の国際性という意味では、互角と言っていいだろう。
 よって、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、互角といえる。

<教育面>
 教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い関西学院大が優勢である。ただし、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 さらに、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、関西学院大理工学部の方が少なく、「少人数教育」の環境もより整っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、関西学院大の方が少し多いが、ほとんど差はないと考えていいだろう。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、関西大化学生命工学部がやや優位の印象がある。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地になるだろうか(繰り返しになるが、実際にキャンパスを訪れてみることもおすすめする)。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201620.628.2
卒業生数(人)学部2015337472
進学者数(人)学部2015133189
進学率(%)学部201539.50%40.00%
公務員就職者数(人)学部2015119
公務員就職比率(%)学部20153.30%1.90%
警察官就職者数(人)大学20155630
国家公務員総合職(人)大学2015109
CA採用数(人)大学20141031
国会議員の数(人)大学201565
上場企業の社長数(人)学部2006※8数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201544753576
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.160.15
上場企業の役員数(人)学部2006※77数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015351399
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0120.017
※関西大の「学部単位」の社長数、役員数は旧「工学部」(改組前)の数字

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、関西学院大が8%ほど高い。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、関西大化学生命工学部と関西学院大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、関西学院大理工学部の方が僅かに高いが、誤差の範囲内である。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、関西大化学生命工学部が高い。恐らく警察官の割合が高いものと思われる。

<主要な就職先の比較>

関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
大阪府教員兵庫県教育委員会
天龍化学工業三井住友銀行
旭化成ホームズTIS
NTNDTS
大阪府警察
近鉄グループホールディングス
三栄源エフ・エフ・アイ
シーピー化成
ジェイテクト
吹田市職員

 主要就職先の比較においては、関西学院大のデータが少ないため、単純比較はできない。双方とも、教員になるケースが多いようである。民間企業の就職先についても、業界がバラバラであり、やはり学部卒業段階では「文系」学部の卒業生と似た進路になるような傾向が出ているようである。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、ほぼ互角と言って良いだろう。上場企業の社長輩出率、役員輩出率ともほとんど似ている。「学閥」という観点で考えた場合においては、どちらが有利・不利とはならないほどの差である。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度関西大学
化学生命工学部
関西学院大
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015682,253639,494
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152428

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、関西学院大がやや勝っており、改革で先行しているイメージがある。しかしその差はわずかであり、ほぼ互角と言っていいかもしれない。

<まとめ>
 以上、関西大化学生命工学部と関西学院大理工学部を比較してみてきた。全体としては、ほぼ互角といえる。強いて優劣をつけるならば、キャンパスライフの面で優位の関西大化学生命工学部が僅かばかり優位といえるかもしれない。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、関西大化学生命工学部に進学した人が47%、関西学院大理工学部に進学した人が54%(サンデー毎日2014年7月20日号より)というほぼ互角の結果が出ている。これだけの僅差であれば、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。
 そして最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。