2017年3月5日日曜日

産近甲龍対決:京都産業大理学部VS甲南大理工学部

 いわゆる「産近甲龍」のうち、同じ京都の大学同士として比べられることの多い、京都産業大と甲南大。今回は京都産業大理学部と甲南大理工学部に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」


項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学2015128889048
学部の学生数(人)学部2015403721
入試難易度(河合塾)学部201647.550
入試難易度(駿台)学部20164649
入試難易度(ベネッセ)学部20165358
入学者数(人)学部2016126155
競争入試での入学者(人)学部201672112
競争入試の割合(%)学部201657.10%72.30%
現役入学者の比率(%)学部201691.387.1

 入試難易度は3社とも甲南大理工学部が上の数値を出している。したがって、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、甲南大理工学部に軍配が上がる。
 また、「競争入試の割合」については、甲南大理工学部の方が高く、定員についても多いため、偏差値のバイアスないと考えて良い。難易度は見かけの数字通りに受け取っていいだろう。
 (一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「募集定員」を比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015573566
学生還元率(%)大学201533.60%32.30%
奨学費(円)大学2015360,491,399122,888,962
学生一人当たりの奨学費(円)大学201527,97113,582
卒業率(%)学部201477.478.9
最寄駅の平均家賃(万円)20164~4.53.5~4

 4年間でかかる学費については、京都産業大理学部が7万円ほど高い。ただし、この程度の差であれば学費値上げなどがあれば簡単に逆転される差でしかない(学科や専攻により学費が異なる場合があるため、詳細は各大学のHPで確認してほしい)。
 また、学生還元率や一人当たりの奨学費については、京都産業大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、京都産業大に軍配が上がる。
 なお、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、やや甲南大の方が安いが、下宿コストについての差はほとんどないといっていいだろう。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)についても、ほとんど違いがなく、誤差の範囲内であろう。
 以上を総合し、コスト面をトータルで考えると、互角と言えるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
キャンパス学部2016神山【中間型】岡本【中間型】
1年以内退学率(%)学部201401.2
4年間退学率(%)学部20147.16.6
入学者の地元占有率(%)学部201627.861.3
女子入学者の割合(%)学部20162723.2
大学全体の女子学生数(人)大学201640123617
大学全体の男子学生数(人)大学201687945412
大学全体の女子学生比率(%)大学201631.30%40.10%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし(2人以下)6
受入留学生数(人)学部201530
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.70%0.00%
長期留学派遣学生数(人)大学20159641
長期留学派遣の割合(%)大学20153.00%1.80%
ST比(人)学部201513.420
専任教員数(人)学部20153036
一人当たり貸出冊数(冊)大学201511.33.7

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。京都産業大理学部は京都市内の地下鉄国際会館駅からバスで約10分の「神山キャンパス」で4年間を過ごす。交通の便は良いとは言えないが、その分、広々したキャンパスで、周囲は京都の落ち着いた雰囲気を感じつつ、学生生活を送ることができる。付近に店はあまりないため、歓楽街などはキャンパスから少し離れた場所まで繰り出すことになるが、京都市内の大学の大半は同じなので、デメリットではないだろう。
 一方の、甲南大学は、一言で言うとオシャレなキャンパス。阪急神戸線の岡本駅かJR神戸線の摂津本山駅から徒歩10分の「岡本キャンパス」で4年間を過ごす。周囲にはオシャレな店が並んでおり、キャンパス界隈がオシャレな大学のイメージそのものといっていいだろう。
 キャンパスを比較すると、どちらもポテンシャルが高く、甲乙つけがたい。女子学生にとっては甲南大が上と考える人が多いだろうが、結局はどちらの「イメージ」を重視するかであろう。学生っぽい明るいノリで学生生活を積極的に楽しみたいのであれば京都産業大であろうし、お金持ち学生に交じって優雅な学生生活を送りたければ甲南大だろう。価値観によってどちらで大学生活を送りたいかという判断は異なるため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は甲南大理工学部、4年退学率は京都産業大理学部が高いという数字が出ている。しかし大差ではないため、これをもって優劣はつけられまい。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率は京都産業大理工学部の方が高いが、大学単位で比較すると甲南大の女子学生比率が高い。大学全体で考えると10%弱の差があるため、それなりの差はあると言って良い。
 なお、地元占有率は京産大が低く、留学生比率についても京産大が高いため、学生の多様性という観点で比較すると、京都産業大の方が恵まれた環境といえる。言い換えるならば、より多様な価値観に触れることができる可能性が高いといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、京都産業大に軍配が上がる。甲南大と比べて1.6倍の留学生派遣比率であり、僅かな差とはいえない数字である。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、注目したい数値であり、一つの判断材料にもなりうるだろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、いずれも低く、少人数教育の環境が整っているといえる。そのなかでも、京都産業大理学部は13.4という優れた数値であり「少人数教育」の環境がかなり整っていると言って良い。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、京都産業大の方が勝っている。甲南大の冊数が少なすぎであり、マイナスポイントであるだろう。

 その他の比較としては、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、京都産業大は50位(11ポイント)、甲南大はランク外(10ポイント以下)となっている。こちらでは、京都産業大がやや優位のようだ。
 
 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、京都産業大理学部がやや優位といえるだろう。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201611.716.5
卒業生数(人)学部201581149
進学者数(人)学部20151348
進学率(%)学部201516.00%32.20%
公務員就職者数(人)学部201522
公務員就職比率(%)学部20152.50%1.30%
警察官就職者数(人)大学20157129
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)数値なし(1人以下)
CA採用数(人)大学2014数値なし(8人以下)数値なし(8人以下)
国会議員の数(人)大学201500
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201521362683
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.170.3
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201587127
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0070.014

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、双方とも2ケタ以上の数値を誇っており、良好な就職実績である。その中でも、甲南大の16.5%という数値はより優れているといえる。

<大学院に進学する>
 進学率は、甲南大理工学部の方が、16%程度高い。大学院進学を想定しているのであれば、甲南大理工学部の方が良いだろう。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、京都産業大理学部の方が高い。2倍以上の差があるため、、公務員になりたいのであればば判断材料の一つになるだろう。

<主要な就職先の比較>

京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
メイテックトラストテック
大阪ガス大塚商会
大阪府教育委員会西兵庫信用金庫
京都信用金庫宇宙航空研究開発機構
積水ハウス
西日本旅客鉄道
野村証券
富士通ゼネラル
三菱電機システムサービス
和歌山県庁

 主要就職先をみると、大学院に進学せず、学部卒で就職する場合は「研究職」としては就職していないことがうかがわれる一覧となっている。ほとんど文系の就職先と変わらない内容となっており、学部卒で就職する場合はそのあたりも知っておいた方が良いだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、甲南大が優位であるといえる。上場企業の社長数、役員数ともに実績がある。関西財界での強さが数字にも出ているといえよう。これだけの「先輩」がいれば、「学閥」として有利に働くこともあるかもしれない。京都産業大も、社長・役員の輩出実績は優れている方だが、甲南大と比べると見劣りしてしまうのが実情だ。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度京都産業大学
理学部
甲南大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015225,533199,339
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151722

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、甲南大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、京都産業大は44位(8ポイント)、甲南大はランク外(57位以下)であり、高校現場の印象では、京都産業大の方が優勢の結果となっている。

<まとめ>
 以上、京都産業大理学部と甲南大理工学部を比較してみてきた。教育面では京産大理学部が勝っているようだが、全体としては、甲南大理工学部が優位であると言える。入学時の学力、そして就職実績が大きい。
 しかし、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。
 「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。