2017年3月29日水曜日

産近甲龍対決:近畿大経済学部VS甲南大経済学部

 今回はいわゆる「産近甲龍」の中のライバル校同士である近畿大と甲南大の「経済学部」について比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。



「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
大学全体の学部生数(人)大学2015315869048
学部の学生数(人)学部201530981619
入試難易度(河合塾)学部201652.547.5
入試難易度(駿台)学部20164948
入試難易度(ベネッセ)学部20166359
入学者数(人)学部2016748402
競争入試での入学者(人)学部2016318230
競争入試の割合(%)学部201642.50%57.20%
現役入学者の比率(%)学部201688.192.8

 入試難易度は3社とも近畿大経済学部が上の数値を出している。駿台こそ僅差であるものの、残りの2社は結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、近畿大経済学部に軍配が上がる。
 ただし、競争入試の割合については、甲南大の方が明らかに高い。近畿大の比率は5割を切っているため、偏差値が見かけ以上に高く出てしまう傾向にある。難易度の単純比較ではなく、両学部の差は見かけよりはないと考えて良いだろう。
(なお、一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015485389
学生還元率(%)大学201542%以下32.30%
奨学費(円)大学2015数値なし122,888,962
学生一人当たりの奨学費(円)大学2015数値なし13582
卒業率(%)学部201478.283.1
最寄駅の平均家賃(万円)20163~3.53.5~4

 4年間でかかる学費については、甲南大経済学部の方がなんと100万円近く安い。この差は、偏差値の差を吹き飛ばすほどのインパクトがある。ただし、学科によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 なお、学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、双方の大学でコストの違いはあまりなさそうだ(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、近畿大経済学部の方が5%ほど高いのも一つの判断材料にはなるだろう。
 以上の通り、コスト面では、甲南大経済学部が明確に勝っているといえそうだ。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
キャンパス学部2016東大阪
【中間型】
岡本
【中間型】
1年以内退学率(%)学部20141.10.8
4年間退学率(%)学部20149.22.3
入学者の地元占有率(%)学部201653.568.4
女子入学者の割合(%)学部201625.425.1
大学全体の女子学生数(人)大学201697523617
大学全体の男子学生数(人)大学2016225705412
大学全体の女子学生比率(%)大学201630.20%40.10%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし
(2人以下)
6
受入留学生数(人)学部2015210
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.70%0.00%
長期留学派遣学生数(人)大学20151041
長期留学派遣の割合(%)大学20150.10%1.80%
ST比(人)学部201564.567.5
専任教員数(人)学部20154824
一人当たり貸出冊数(冊)大学20158.63.7

<キャンパスの立地>
 近畿大経済学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅が最寄り駅であり、そこから徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
 一方の、甲南大学は、一言で言うとオシャレなキャンパス。阪急神戸線の岡本駅かJR神戸線の摂津本山駅から徒歩10分の「岡本キャンパス」で4年間を過ごす。周囲にはオシャレな店が並んでおり、キャンパス界隈がオシャレな大学のイメージそのものといっていいだろう。
 キャンパスを比較すると、どちらもポテンシャルが高く、甲乙つけがたい。結局はどちらの「イメージ」を重視するかであろう。ビンボー学生を積極的に楽しみたいのであれば近畿大であろうし、お金持ち学生に交じって優雅な学生生活を送りたければ甲南大だろう。価値観によってどちらで大学生活を送りたいかという判断は異なるため、実際に足を運んで自分の目で確かめることをお勧めする。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は双方とも差はほとんどないものの、4年退学率は、近畿大経済学部の退学率が高く、甲南大経済学部は低い数値となっている。この差は顕著であり、近畿大経済学部の退学リスクは高いといっていいだろう。近畿大のマイナスポイントといえる。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の男女比については、ほとんど違いはないが、大学全体の女子学生比率は甲南大が10%高い。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
 なお、外国人留学生の比率については、近畿大経済学部が多く、教室内の国際性という意味では、近畿大経済学部が優れているといえる。もっとも、このご時世で甲南大経済学部の外国人留学生が0というデータはいただけない。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い甲南大がかなり優勢といえる。かなりの差が開いている。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、どちらも多く、「少人数教育」の環境は整っているとはいえない。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、近畿大の方が多い。甲南大の冊数の少なさは、マイナスポイントであるだろう。
 また、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大は21位(24ポイント)、甲南大はランク外(53位以下)となっている。
 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや甲南大が優勢だろうか。何よりも、近畿大経済学部の退学率の高さが気になる。それ以外では、近畿大が勝っている部分も少なくないが、かなりインパクトのある数字である。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
主要企業400社への就職率(%)大学201610%以下16.5
卒業生数(人)学部2015696376
進学者数(人)学部201543
進学率(%)学部20150.60%0.80%
公務員就職者数(人)学部20153515
公務員就職比率(%)学部20155.00%4.00%
警察官就職者数(人)大学20159529
国家公務員総合職(人)大学20152.000数値なし
(1人以下)
CA採用数(人)大学2014数値なし
(8人以下)
数値なし
(8人以下)
国会議員の数(人)大学201520
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
8
社長の数(人)大学201562432683
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.20.3
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
48
上場企業の役員数(人)大学2015139127
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0040.014

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、甲南大は16.5%の数値を誇っおり、近畿大と比較して優れているといえる。
 もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、甲南大経済学部と近畿大経済学部で目に見えるほどの差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、近畿大経済学部が高いが、差は大きくないため、気にするほどではないだろう。
 また、「警察官」の就職実績は近畿大の方が多いが、双方の大学の規模が約3倍あるため、警察官就職率もほぼ同じくらいであると思われる。したがって、公務員志望の場合はどちらを選んでも差はないだろう。

<主要な就職先の比較>

近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
関西アーバン銀行みなと銀行
三井住友銀行池田泉州銀行
近畿大阪銀行日新信用金庫
尼崎信用金庫日本郵便
大阪信用金庫積水ハウス
大阪府警察関西アーバン銀行
みずほフィナンシャルグループ三井住友銀行
三菱東京UFJ銀行播州信用金庫
野村証券みずほフィナンシャルグループ
花王西日本旅客鉄道

 主要就職先の上位は明確な差は見られず、関西を中心とした金融機関が中心となっている。双方とも就職状況は悪くないと言えるだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、大学の規模を加味すれば甲南大経済学部が優位であるといえる。上場企業の社長数、役員数ともに「学部単体」で実績があり、名門学部といえるほどである。これだけの「先輩」がいれば、「学閥」として有利に働くこともあるかもしれない。一方で、近畿大の方は、何よりも卒業生数の多さが強みであり、大企業から中小企業まであらゆる企業に卒業生がいることはメリットになるだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度近畿大学
経済学部
甲南大学
経済学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015495,208199,339
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151622

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、甲南大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
 しかし、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、甲南大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象では、近畿大が改革のイメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、近畿大経済学部と甲南大経済学部を比較してみてきた。全体としては、ほぼ互角に近いが、甲南大経済学部が僅かばかり優位の印象を受ける。入試難易度は近畿大経済学部が優勢であるものの、退学率が高く、そして就職実績で甲南大に負けている面があることを加味すると、甲南大の方をおすすめするという結論に至る。ただし、繰り返しになるが、近畿大が勝っている数多く部分もあるため、最終的な判断については、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。