2017年3月17日金曜日

産近甲龍対決:龍谷大理工学部VS近畿大理工学部

 今回はいわゆる「産近甲龍」の中のライバル校同士である龍谷大理工学部と近畿大理工学部について比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20151752431586
学部の学生数(人)学部201524664524
入試難易度(河合塾)学部201647.552.5
入試難易度(駿台)学部20164649
入試難易度(ベネッセ)学部20165460
入学者数(人)学部20165141112
競争入試での入学者(人)学部2016203708
競争入試の割合(%)学部201639.50%63.70%
現役入学者の比率(%)学部201684.679.5

 入試難易度は3社とも近畿大理工学部が上の数値を出している。予備校としては、近畿大理工学部が優位とみているようだ。
 なお、競争入試の割合については、近畿大理工学部が大差をつけて高い。したがって、予備校が出す難易度以上に差があると考えていいだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学があるため、「競争入試の割合」を本ブログでは比較するようにしている。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015579593
学生還元率(%)大学201534.90%42%以下
奨学費(円)大学2015770,874,120数値なし
学生一人当たりの奨学費(円)大学201543,990数値なし
卒業率(%)学部201477.680.8
最寄駅の平均家賃(万円)20163~3.53~3.5

 4年間でかかる学費については、龍谷大理工学部の方が14万円程度安い。ただし、学科・専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい。
 なお、学生還元率や奨学費のデータについては、近畿大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
 龍谷大の学生還元率や奨学費は悪くない数字と言えるため、便宜上「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、龍谷大に軍配を上げておこう。
 一人暮らしをする場合には、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、ほとんど同じである(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 また、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、龍谷大理工学部の方が3%ほど高いが、誤差の範囲といっていいだろう。
 以上の通り、コスト面を総合すると、龍谷大理工学部がやや優位といえるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
キャンパス学部2016瀬田【郊外型】東大阪【中間型】
1年以内退学率(%)学部20142.81.8
4年間退学率(%)学部201410.47.6
入学者の地元占有率(%)学部20162855.8
女子入学者の割合(%)学部201611.313.4
大学全体の女子学生数(人)大学201672799752
大学全体の男子学生数(人)大学20161195422570
大学全体の女子学生比率(%)大学201637.80%30.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学2011数値なし
(2人以下)
数値なし
(2人以下)
受入留学生数(人)学部20151123
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20160.40%0.50%
長期留学派遣学生数(人)大学20157710
長期留学派遣の割合(%)大学20151.80%0.10%
ST比(人)学部201526.528.1
専任教員数(人)学部201593161
一人当たり貸出冊数(冊)大学201510.88.6

<キャンパスの立地>
 龍谷大理工学部は、JR瀬田駅からバスで10分程度の「瀬田キャンパス」で4年間を過ごす。住所は滋賀県大津市であるが、アクセスはあまり良くなく、典型的な「郊外型キャンパス」である。その分、キャンパスは広々しており、腰を据えて勉強(研究)するにはうってつけの環境ともいえるだろう。また、自然そのままの「里山」もあり、自然豊かな環境で学生生活を過ごせるため、都会のごみごみした環境が苦手な学生には良いかもしれない。
 一方の近畿大理工学部は、大阪のターミナル駅なんば駅から近鉄電車で20分の長瀬駅から徒歩10分の「本部キャンパス」で4年間を過ごす。都会ではないが、周囲は学生街となっており、遊び場所にも事欠かない。緑も豊富ながらも利便性も悪くない、バランスの取れたキャンパスと言えるだろう。
 キャンパスについては滋賀と大阪で単純比較はできないが、アクセスなど利便性などにおいては近畿大理工学部に軍配が上がる。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、近畿大理工学部の退学率が低い。一方で、龍谷大理工学部はやや高い印象を受ける。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率については、近畿大理工学部が2%ほど高いが、誤差の範囲内である。
 また、外国人留学生の比率については、近畿大理工学部が僅差で高いが、教室内の国際性という意味では、ほぼ互角とみていいだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学派遣率が高い龍谷大が優勢だ。かなりの差が開いている。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、留学している比率の高い方へ行くというのも一つの手だろう。ただし、理系学部においては、この数値よりも低い数値となっていると推測されるため、鵜呑みにはせずに、参考程度に見ておいた方が良い。
 また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、龍谷大理工学部が少なくいが、ほとんど差はない。「少人数教育」の環境は互角といえる。

 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、龍谷大の方が多い。しかし、差は大きくはない。
 また、大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大は21位(24ポイント)、龍谷大はランク外(53位以下)となっている。
 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、近畿大理工学部がやや優位の印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201610%以下10%以下
卒業生数(人)学部2015521999
進学者数(人)学部201597208
進学率(%)学部201518.60%20.80%
公務員就職者数(人)学部20151148
公務員就職比率(%)学部20152.10%4.80%
警察官就職者数(人)大学20155295
国家公務員総合職(人)大学2015数値なし(1人以下)2
CA採用数(人)大学2014数値なし(8人以下)数値なし(8人以下)
国会議員の数(人)大学201522
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201511076243
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.060.2
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)数値なし(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学201563139
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0040.004

<大学院に進学する>
 進学率は、近畿大理工学部の方がやや高い。しかし、差は大きくないため大学院への進学を考える場合の有利・不利はないだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、近畿大理工学部が高い。公務員就職なら近畿大理工学部が有利であろう。

<主要な就職先の比較>

龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
大阪府教育委員会大阪府教育委員会
滋賀県教育委員会きんでん
かんでんエンジニアリングジェイテクト
村田製作所明治
京セラNTN
京都府教育委員会西日本旅客鉄道
アルプス電気ローム
GSユアサ関西電力
SCREENホールディングス大阪ガス
堀場製作所西日本電信電話

 主要就職先についてみてみると、双方ともに教員が目立つ。どちらも関西の有力企業が名を連ねており、就職実績は良好といえるだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、大学の規模を加味すればほぼ互角といえる。上場企業の社長数、役員数ともにそれなりの数を輩出している。ただ、「学閥」といえるほどは輩出していないため、そのあたりは期待できないだろう。また、近畿大は、何よりも卒業生数の多さが強みであり、大企業から中小企業まであらゆる企業に卒業生がいることはメリットになるだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度龍谷大学
理工学部
近畿大学
理工学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015206,445495,208
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20151216

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、近畿大が勝っており、改革でやや先行しているイメージがある。
 また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、近畿大が1位(296ポイント)、龍谷大はランク外(21位以下)となっており、高校現場の印象でも、近畿大が改革のイメージが強いようである。

<まとめ>
 以上、龍谷大理工学部と近畿大理工学部を比較してみてきた。全体としては、難易度通りに近畿大理工学部が優位の印象を受ける。ただし、龍谷大が勝っている部分もあるため、最終的な判断については、是非、両大学のキャンパスの見学をしたうえで決めてもらえればと思う。特に近畿地方以外から進学する場合は、足を運んでみることを強くお勧めしたい。
 そして、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。