2017年3月18日土曜日

MARCH対決:中央大理工学部VS明治大理工学部

 MARCHというくくりの中で、校風も似ており、長らくライバルとして競ってきた中央大と明治大。今回は両校の「理工学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。


※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
大学全体の学部生数(人)大学20152508030538
学部の学生数(人)学部201541014194
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165356
入試難易度(ベネッセ)学部20166768
入学者数(人)学部20168991025
競争入試での入学者(人)学部2016564688
競争入試の割合(%)学部201662.70%67.10%
入試方式の数(競争入試)学部201535
現役入学者の比率(%)学部201678.373.9

 入試難易度は3社とも、明治大理工学部が上の数値を出している。これだけ明確な結果であれば、偏差値的には明治大理工学部が上であると判断できる。
 また、「競争入試の割合」も明治大理工学部の方が有意に高いことを勘案しても、明治大理工学部の入学者の方が「全体として学力が上」という結論に至る。ただし、明確な差があるとはいえ、特に理工系の大学選択については、「学びたい学問・研究分野」が重要になってくる。偏差値の差のみで明治大理工学部を選ぶという判断材料になるとまでは言えないだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015636641
学生還元率(%)大学201535.70%52.90%
奨学費(円)大学20151,245,994,9771,382,901,203
学生一人当たりの奨学費(円)大学20154968145285
卒業率(%)学部201482.579.3
最寄駅の平均家賃(万円)20167.5~83.5~4

 4年間でかかる学費については、、明治大理工学部が5万円ほど高いが、ほとんど誤差の範囲だろう。この程度の差は学費値上げ等により、簡単に逆転が発生したりする(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率は明治大が高く、この差は意外にも大きい。しかし、一人当たりの奨学費については中央大が多いことから、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、ほとんど互角と言えるかもしれない。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、文系と異なり中央大理工学部は都心にキャンパスを構えるため、コスト的には明治大の方が割安かもしれない。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、中央大が低いが、3%程度の差であり、誤差の範囲であろう。
 以上を総合すると、コスト面ではほぼ互角といっていいだろう(一人暮らしの場合は中央大理工学部の方が若干お金がかかるかもしれない)。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
キャンパス学部2016後楽園【都市型】生田【郊外型】
1年以内退学率(%)学部201411.9
4年間退学率(%)学部20144.75.3
入学者の地元占有率(%)学部201632.430.5
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201556.163.9
女子入学者の割合(%)学部201623.216.9
大学全体の女子学生数(人)大学2016906410545
大学全体の男子学生数(人)大学20161575720289
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.50%34.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学20112385
受入留学生数(人)学部201565112
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.60%2.70%
長期留学派遣学生数(人)大学20158586
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%1.10%
ST比(人)学部201522.226.2
専任教員数(人)学部2015185160
一人当たり貸出冊数(冊)大学20154.89.6

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。中央大理工学部は、東京ドーム近くの後楽園キャンパスで4年間を過ごすことになり、文系と違って「都市型キャンパス」である。対して、明治大理工学部は、川崎市の生田で4年間を過ごす。都会とは言えない、「郊外型キャンパス」となっている。
 買い物、街中での遊びなどの利便性という観点からは、はるかに中央大のキャンパス立地が良い。簡単に言えば、「遊びたい学生」は迷わず中央大を選んだ方がよい。しかし、逆に「都会の誘惑に惑わされたくない」と殊勝なことを考える人にとっては、明治大は捨てがたい。郊外型のキャンパスは、「大学生として勉強する環境」に恵まれているのは間違いなく、安価でキャンパスの徒歩圏内に一人暮らしもできる(通学時間が節約できる分、やりたいことができるという考え方もある)。特に理工系の場合は、大学にいる時間が自然と長くなるから、重要な観点かもしれない。
 まとめると、キャンパスの立地については、利便性は中央大の圧勝ではあるのは間違いない。しかし、理系の学部であることを考えると、明治大のキャンパスの立地も悪くはないかもしれない。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、中央大理工学部の方が低い。
 とはいうものの、明治大の方が特に高いというわけでもなく、退学率は大学選択の判断材料にはなりえないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、中央大が20位(29ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、中央大理工学部の女子学生比率が、明治大理工学部より高いのがわかる。7%程度の差があり、結構大きな差となっている。これはキャンパスの立地が影響しているのかもしれない。女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、男だらけのイメージが強い「理工学部」の教室内の雰囲気が少しは華やかになることは事実だろう。
 なお、留学生比率については、明治大理工学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、明治大理工学部が優れているといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合が、明治大は1.1%、中央大は1.4%となっており、中央大に軍配が上がるものの、理系に限ってはこれよりも低い数値となることが推測されることから、あまり判断材料にはならないだろう。
 一方で、専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、中央大の方が低く、中央大理工学部の方が「少人数教育」の環境が整っているといえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、双方とも文系中心の大学であるため、理系にとっては参考数値程度にしかならないが、明治大の勝ちである。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、中央大が19人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、中央大が10人、明治大が19人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところか。
 その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっている。こちらでは、明治大が優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、「理系学部」であることを加味すれば、ほぼ互角のような印象を受ける。大きな判断材料は、やはりキャンパスの立地だろうか。都市型キャンパスが良いか、郊外型キャンパスが良いか、価値観次第で変わってくるだろう。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.326.7
卒業生数(人)学部2015922944
進学者数(人)学部2015365356
進学率(%)学部201539.60%37.70%
公務員就職者数(人)学部20155816
公務員就職比率(%)学部20156.30%1.70%
警察官就職者数(人)大学20152836
国家公務員総合職(人)大学20154825
CA採用数(人)大学20141311
国会議員の数(人)大学20153116
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)数値なし(5人以下)
社長の数(人)大学201585349580
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.340.31
上場企業の役員数(人)学部20066376
上場企業の役員数(人)大学2015969650
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0390.021

<大企業に入りたい>
 さきにお断りしておきたいのは、今回の比較は「学部」の比較であるということだ。理系の場合は、大学院に進学する割合が高く、学問分野を生かした職業に就きたければ、学部卒業段階では卒業という選択肢になならない。したがって、ここでの就職とは、文系と同じ様なジェネラリスト・総合職社員としてのことを指しているとご判断いただきたい。

 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、明治大がやや高い。ただし、大きな差ではない。
 いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、中央大理工学部と明治大理工学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかの大学を選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<大学院に進学する>
 大学院進学率は、中央大理工学部の方が少し高い。しかし大差ではないため、判断材料にはならないだろう。仮に他大学の大学院に進学することを想定している場合は、中央大理工学部の方が都心部にあるため、他大学への選択肢を広げやすいということは考えられるかもしれない(他大学へ進学しても、通学の便がさほど変わらず、引越しなどが発生しないことが想定されるため)。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、中央大理工学部の数値が明治大理工学部の約4倍となっており、公務員を目指すのであれば中央大理工学部に進学する方が良いかもしれない。
 なお、両大学の「理工学部」にはいわゆるキャリア官僚職「国家公務員総合職」を目指す人は少ないだろうが、もしチャレンジするのであれば、中央大の方がいいかもしれない。官僚OBの数の違いもあれば、官僚を目指す仲間の存在も大きいからだ。

<主要な就職先の比較>

中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
東京都庁日立製作所
東京都教育委員会本田技研工業
SCSK三菱電機
日本電気キヤノン
キヤノン清水建設
日立システムズいすゞ自動車
東日本旅客鉄道大林組
東日本電信電話オリンパス
千葉県庁大成建設
神奈川県横浜市役所東京電力ホールディングス
※大学院含む

 主要就職先は、明治大理工学部は大学院も含まれていることを留意する必要がある。両社の明確な差は中央大学理工学部が「公務員」としての就職が目立つことだ。
 中央大理工学部のデータは学部卒に限るため、文系とほとんど同じ枠で採用していることが想定されるが、かなりの安定企業が並んでいる。繰り返しになるが、「理系」を生かした就職では「修士」が必要となるため、学部卒段階で一般企業への就職を考えた際には、両大学の伝統・ネームバリューを考えた際には差はないだろう。

<出世した先輩の多さ>
 先輩がどの程度、出世しているかを比較については、主に「文系」を想定したものであり、理系にとっては参考として受け取ってほしい。大学全体の「上場企業の役員数」などは中央大が多いが、中央大の看板学部・法学部による部分が大きいため、理工学部はさほど数を輩出していないのが実情である。とはいうものの、「学閥」といった場合、通常は「大学名」で判断されるケースが多いため、中央大出身の役員が多いことは、中央大学理工学部出身者にとって有利な可能性はある(「学閥」が存在すればの話ではあるが…)。

<上位校との差について>
 「研究職」として一流企業への就職を望むのであれば、中央大や明治大の研究科(大学院)より、東大や東京工大、早稲田、慶應など、もう一つ上のレベルの大学院に進学することをおすすめしたい。文系の「学歴フィルター」とはやや異なるが、やはり超一流企業はそれらの大学からの採用実績が多くなる。学部生の4年間でしっかり勉強して、それらの大学院にぜひチャレンジしてほしい。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度中央大学
理工学部
明治大学
理工学部
国からの特別補助金
支給額(千円)
大学2015596,960738,498
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152424

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額であるが、学生数一人当たりの額は互角という結果となっている。
 ただし、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、中央大が50位(17ポイント)、明治大が3位(133ポイント)と、高校現場の印象では、明治大が勝っているといえよう。

<まとめ>
 以上、中央大理工学部と明治大理工学部を比較してみてきたが、全体の印象としてはほぼ互角の印象であり、強いて優劣をつけるならば難易度の差があることから明治大理工学部が僅かに優位といえるだろうか。最後にはキャンパスの立地で選ぶということになろう。なお、実際に両方に合格した人の選択を見てみると、中央大理工学部に進学した人が15%、明治大理工学部に進学した人が85%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。昨今は、明治大の人気度が上がる傾向があり、その差が表れているのかもしれないが、本ブログの判断ではそのような大差はないと考えている。
 しかし一方で、強調したいのは、「理工学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。