2017年1月22日日曜日

早慶上智対決:上智大法学部VS早稲田大商学部

 今回の比較対象は、「早慶上」というくくりの中で語られることの多い、上智大と早稲田大。今回は他の比較とは違い、学問系統の違う学部同士を比較することとし、上智大法学部と早稲田大商学部の双方に合格した場合、どちらに入学する方が良いかという観点から比較したい。
 というのも、早稲田大と上智大は一般的に早稲田>上智と言われており、同じ学問系統であれば、迷いなく早稲田を選ぶケースが多いためである。しかし、早稲田の中位学部と上智の上位学部との比較においては事情が変わってくるため、今回の比較対象はこの2学部とした。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
大学全体の学部生数(人)大学20151237642772
学部の学生数(人)学部201514944410
入試難易度(河合塾)学部20166565
入試難易度(駿台)学部20166565
入試難易度(ベネッセ)学部20167781
入学者数(人)学部2016332921
競争入試での入学者(人)学部2016200507
競争入試の割合(%)学部201660.20%55.00%
入試方式の数(競争入試)学部201522
現役入学者の比率(%)学部201676.885.1

 入試難易度は早稲田大商学部の1勝2分となっており、ほとんど互角と言っていいだろう。
 また、「競争入試の割合」は上智大法学部が高いものの、「入学定員」は早稲田大商学部が多いため、偏差値操作の要素としてはプラスマイナスゼロと考えて良い。したがって、難易度は額面通りに受け取っていいだろう。
 (競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。その他、偏差値を下げないための方策として、入試方式を増やして、各入試方式の定員を小さくすることで見かけの偏差値を維持するという手法もある。)


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015411436
学生還元率(%)大学201540.20%53.80%
奨学費(円)大学2015355,420,0733,018,401,177
学生一人当たりの奨学費(円)大学201528,71870,570
卒業率(%)学部201473.373.3
最寄駅の平均家賃(万円)20168.5~96.5~7

 4年間でかかる学費については、上智大法学部が25万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 しかし一方で、学生還元率、一人当たりの奨学費は早稲田大が上である。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、早稲田大に軍配が上がる。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、早稲田大の方がやや安く、一人暮らしのコストは早稲田大の方が安くなるだろう。ただ、上智大の場合は徒歩圏内に住むケースは少ないであろう(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほぼ同じである。
 以上を加味すると、学費の差はそれなりにあるものの、全般的なコストパフォーマンスは、ほぼ互角といえるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
キャンパス学部2016四谷【都市型】早稲田【都市型】
1年以内退学率(%)学部20140.60.1
4年間退学率(%)学部20142.52.5
入学者の地元占有率(%)学部201632.837.4
大学全体の首都圏出身比率(%)大学2015数値なし61.8
女子入学者の割合(%)学部20165333.6
大学全体の女子学生数(人)大学2016724815686
大学全体の男子学生数(人)大学2016538626495
大学全体の女子学生比率(%)大学201657.40%37.20%
女性ファッション誌登場人数(人)大学201143156
受入留学生数(人)学部201537174
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20162.50%3.90%
長期留学派遣学生数(人)大学2015251910
長期留学派遣の割合(%)大学20158.10%8.50%
ST比(人)学部201546.757.3
専任教員数(人)学部20153277
一人当たり貸出冊数(冊)大学201513.616.2

<キャンパスの立地>
 まずはキャンパスの立地から。上智大は東京のビジネス街・四ツ谷駅から徒歩2分の場所にキャンパスを構えており、アクセスは抜群である。高級歓楽街・赤坂も徒歩圏内であり、学生時代から東京の中心部で社会との接点を持つには最適の環境である。ただし、学生数に比してキャンパスは狭い印象がある。また、周囲の物価は高めであり、貧乏学生にはつらい面もあるかもしれない。
 一方で、早稲田大商学部は、日本有数の学生街を擁する「早稲田」にキャンパスを構え、ここで4年間を過ごす。山手線の内側でありながらも、オフィス街とは分離されているため、学生にとっては過ごしやすい街だろう。
 両者のキャンパスを比較すると、アクセス面では上智大が勝るが、それ以外の食事・買い物の利便性などの面では早稲田大が優位といえるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、早稲田大商学部の方が少しだけ低い結果となっている。しかし、数値は双方とも低く、僅差であるため判断材料にはならないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、上智大が27位(26ポイント)、早稲田大はランク外(24ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、上智大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 次に、学生の属性を比較していくと、女子学生比率については、上智大法学部の方が20%程度高い。また、大学全体の女子学生比率も上智大がかなり高くなっており、キャンパスの華やかさでは上智大の方が上だろう。
 一方で、留学生比率については、早稲田大商学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、早稲田大商学部が優れているといえる。
 上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、ほぼ互角といえるだろう。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、僅差であるものの早稲田大に軍配が上がりそうだ。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、上智大法学部が低く、「少人数教育」の環境としては上智大法学部がやや優位といえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、早稲田大が多い。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、上智大が15人、早稲田大が47人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、上智大がランク外(3人以下)、早稲田大が40人であり、高校側の印象では、上智大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、上智大が10位(54ポイント)、早稲田大は3位(159ポイント)となっており、こちらは早稲田大が優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、僅かに早稲田商学部が優勢のような印象を受ける。ただし僅差であり、両方のキャンパスに足を運んで自分の目で雰囲気を確かめることとおすすめしたい。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」

項目名数値単位数値年度上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
主要企業400社への就職率(%)大学201633.837.4
卒業生数(人)学部20153351054
進学者数(人)学部20152732
進学率(%)学部20158.10%3.00%
公務員就職者数(人)学部20153438
公務員就職比率(%)学部201510.10%3.60%
警察官就職者数(人)大学2015数値なし14
国家公務員総合職(人)大学201513140
CA採用数(人)大学20143024
国会議員の数(人)大学20151179
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし(5人以下)35
社長の数(人)大学2015149110993
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.120.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし(46人以下)291
上場企業の役員数(人)大学20151871878
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0150.044

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、早稲田大の方が高い。

<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
 法曹を目指すのであれば法科大学院への進学を想定する必要があるが、その場合は進学率が高い上智大法学部がいいだろう(もちろん、学部で学ぶ学問分野が「法律学」ということも加味して、である)。

<公認会計士になりたい>
 公認会計士を目指す場合は、試験科目と学部で学ぶ学問分野がリンクし、合格実績が上の早稲田大商学部が良いだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、上智大法学部がかなり高い。公務員になることを想定しているのであれば、上智大法学部を選択するのが良いだろう。
 しかし一方で、国家公務員総合職を目指すのであれば早稲田大商学部も捨てがたい。学部単体の実績はさほどないものの、大学としての合格実績がかなりあり、各省庁に散らばっているOBの存在が、入省後も有利に働くであろう。

<主要な就職先の比較>

上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
みずほフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループ
三井住友銀行東京海上日動火災保険
損害保険ジャパン日本興亜三井住友銀行
三井不動産リアルティ三菱東京UFJ銀行
大和証券大和証券
NTTデータ損害保険ジャパン日本興亜
東京都三井不動産リアルティ
三菱東京UFJ銀行SMBC日興証券
博報堂東京都職員Ⅰ類
三菱UFJモルガン・スタンレー証券日本IBM

 主要就職先については、双方とも大手金融機関が多い特徴は似ている。どちらも就職状況は良好といえるだろう。ただし、未確認情報ではあるが、一部の企業では「早慶」と「上智」の比較で、学歴フィルターをかけているという情報もあるため、純粋に間口の広さでは早稲田大商学部の方が若干有利かもしれない。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出しているが、大学全体としての役員輩出率は早稲田大が3倍程度高い。そしてさらに、学部単体でみてみても、その差は顕著である。「学閥」で考えた場合は、早稲田大商学部が有利であろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度上智大学
法学部
早稲田大学
商学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015344,7771,474,478
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152834

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、早稲田大が優勢となっている。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、上智大が19位(26ポイント)、早稲田大は8位(104ポイント)と、早稲田大が勝っている。

<まとめ>
 以上、上智大法学部と早稲田大商学部を比較してみてきたが、全体としては早稲田大商学部が少しだけ優位だろうか。しかし、弁護士や裁判官、検察官として法曹の職に就きたい場合は上智大法学部という選択になるだろうし、将来の希望進路によって選択は変わってくるであろう。