※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
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「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 26211 | 67251 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 3383 | 9313 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 47.5 | 57.5 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 43 | 50 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 53 | 61 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 889 | 2214 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 713 | 840 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 80.20% | 37.90% |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 80 | 86 |
入試難易度は3社とも日本大理工学部が上の数値を出している。それも、結構な差が出ているため、「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、日本大理工学部に軍配が上がる。ただし、「競争入試の割合」については、東洋大理工学部の方が40%以上高いため、偏差値としては東洋大の方が低めに出る傾向がある。一方で日本大学理工学部の募集定員(1学年の数)は膨大であることから、偏差値のバイアスでは、、プラスマイナスゼロとなるだろう。したがって、難易度は見かけの数字通りに受け取っていいだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。また、募集定員が多い方が偏差値が下がってしまう傾向にあるため、本ブログでは、「競争入試の割合」と「募集定員」を比較するようにしている。)
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 551 | 594 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 28.60% | 61%以下 |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 722,379,911 | 数値なし |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 27560 | 数値なし |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 76.1 | 73 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 3~3.5 | 船橋3.5~4、 駿河台9~9.5 |
4年間でかかる学費については、東洋大理工学部が43万円ほど安い。それなりの差と言えるだろう(学科や専攻により学費が異なる場合があるため、詳細は各大学のHPで確認してほしい)。
なお、学生還元率や奨学費のデータについては、日本大の公式HPからはデータが取れなかったため、比較はできない(情報公開が社会的責任として求められている大学においては、少なくとも「奨学費」くらいのデータは公開してほしいものである…)。
したがって、比較はできないものの東洋大のデータを評価すると、MARCHクラスの大学と比べると見劣りするものの、学生還元率・奨学費とも低い数値ではなく、一般的な数値といえるだろう。
また、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、コスト的には東洋大の方が割安となることが予想される(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
一方で、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど差はない(3%程度の差)。双方ともやや卒業は厳しめの印象がある。4分の1程度は留年するということになるからだ(言うまでもなく、留年した場合には余計に学費がかかる)。
上記を総合すると、コスト面では、東洋大に軍配が上がるということになる。それも僅差ではなく、それなりの差があるため、苦学生は東洋大理工学部を選ぶという選択肢もありかもしれない。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 川越【郊外型】 | 船橋(1年) 【郊外型】、 駿河台(2~4年) 【都市型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 2.3 | 1.5 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 11.5 | 11.3 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 41.1 | 28 |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 16.8 | 14 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 12338 | 21427 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 17514 | 46482 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 41.30% | 31.60% |
女性ファッション誌登場人数(人) | 大学 | 2011 | 9 | 97 |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 17 | 239 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 0.50% | 2.60% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 93 | 134 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 1.40% | 0.80% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 38.4 | 25.6 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 88 | 364 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 7.2 | 4.7 |
<キャンパスの立地>
まずはキャンパスの立地から。東洋大理工学部は東武東上線の鶴ヶ島駅から徒歩10分の「川越キャンパス」で4年間を過ごす。率直に言って田舎であり、典型的な「郊外型キャンパス」である。都心部の文系学部の学生との交流はほとんどないが、静かに勉強する環境としては良い環境といえる。
一方の日本大理工学部は、1年生の時は東葉高速鉄道の船橋日大前駅から徒歩1分の船橋キャンパスで過ごす。そして2年次からはJR中央線の御茶ノ水駅から徒歩3分の駿河台キャンパスで3年間を過ごす。キャンパスが変わることをどう考えるかではあるが、郊外型が1年、都市型が3年と考えれば、都会で学生生活を過ごしたい学生にとっても悪くないキャンパス立地であろう。駿河台キャンパスは秋葉原や東京駅からも近く、アクセスは抜群である。船橋キャンパスもアクセスとしてはさほど悪くはない。なお、学科によっては船橋キャンパスで4年間を過ごす学科もあるため、詳細は大学のHPで確認してほしい。
両者を比較すると、キャンパスの立地については、利便性など一般的な価値観では日本大理工学部に軍配が上がるだろう。しかし、理系の学部であるため、学年が進むにつれて遊ぶ時間はないことを考えると、人ごみが嫌いで伸び伸びと大学生活を過ごしたい人にとっては、東洋大の川越キャンパスも悪くはないかもしれない。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、双方とも僅差であるが、全体として数値が少し高めに出ている。もともと理系学部は退学率が文系学部と比べて高めになるが、双方とも4年退学率が10%を超えているのは、少し気になる数値ではある。
なお、大学通信社による2014年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、日本大が36位(19ポイント)、東洋大はランク外(14ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、日本大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。
<学生の属性>
次に、学生の属性を比較していくと、学部単位の女子学生比率はさほど変わりない。大学全体の数値も一応示しているが、双方のキャンパス共に理系学部だけのキャンパスであるため、あくまで参考数値としてみていただきたい。
一方で地元占有率は日本大が低いと出ているが、キャンパスの所在地都道府県の違いがあるため、参考数値として見ていていただきたい。
また、外国人留学生の割合については、日本大理工学部が勝っている。日本大理工学部の学習環境が国際的であると言えるかもしれない。
したがって、「学生の多様性」については大きな差はないが、より多様な価値観に触れることができるのは、日本大理工学部であると言えそうだ。
<教育面>
次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、東洋大に軍配が上がる。東洋大は「スーパーグローバル大学」として採択されており、今後も国際化が進んでいくことが予想される。
先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、東洋大が有利と考えられるが、この数値は大学全体の数値となっており、理工系の学生の留学率はこの数値より低くなることが想定されるため、そのあたりはご留意いただきたい。
次に、専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、こちらは日本大理工学部が勝っている。日本大学理工学部の方が、「少人数教育」の環境が「より整っている」といいえる。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、東洋大の方が勝っている。日本大の場合、学生数が膨大であるため低く出る可能性はあるが、恐らく一番の理由はキャンパスが点在しており、大きな図書館を整備できないことがあるような気がする(あくまでも推測であるが…)。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、日本大理工学部がやや優勢という印象である。留学派遣面などでは東洋大が勝っているが、やはり文系中心の話であり、理系に限ると日大の方が優位と感じる。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 10%以下 | 10%以下 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 699 | 1967 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 80 | 392 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 11.40% | 19.90% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 24 | 174 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 3.40% | 8.80% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 61 | 172 |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 数値なし(1人以下) | 3 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 数値なし(8人以下) | 11 |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 3 | 29 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし(5人以下) | 9 |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 2868 | 22582 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.11 | 0.34 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし(46人以下) | 88 |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 86 | 610 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.003 | 0.009 |
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、日本大理工学部が8.8%となっており、非常に高い数値となっている。公務員になりたい人は、積極的に日本大学理工学部を選ぶ理由になりうるほどの差であると言える。
<大学院に進学する>
進学率は、日本大理工学部の方が、8%程度高い。大学院進学を想定しているのであれば、日本大理工学部の方が良いだろう。もっとも、大学院進学率は専攻する分野によって異なるため、単純比較はできない側面もある。
<主要な就職先の比較>
東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
KDDI | 関電工 |
システムインテグレータ | 竹中工務店 |
日本電設工業 | 東芝 |
東急建設 | 日本電気 |
大和ハウス工業 | 三菱電機 |
大東建託 | 富士重工業 |
大成建設 | 本田技研工業 |
鹿島建設 | 東京地下鉄 |
熊谷組 | 経済産業省 |
パナホーム | 国土交通省 |
主要就職先を比べてみると、東洋大理工学部の就職先が不動産・建設業が多いのが目立つ。一方で日本大学理工学部は、日本を代表するメーカーが多い。
あくまでも、感覚的なものであるが、就職先実績を見る限りは、日本大学理工学部の方が就職実績が勝っているような印象を受ける。
<出世した先輩の多さ>
先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、日本大理工学部に軍配が上がる。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。特に、日本大学は日本最大の大学であり、全国にOB・OGが存在し、大企業であればほぼすべての企業に卒業生がいるとも言われている。この事実は強みになるだろう。もちろん、企業によって事情は異なるし、東洋大理工学部だからといって不利になることはないだろうから、あくまでも両者を比較した場合の話である。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 東洋大学 理工学部 | 日本大学 理工学部 |
国からの特別補助金支給額 (千円) | 大学 | 2015 | 413,553 | 1,479,950 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 16 | 22 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。
扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、日本大が勝っており、改革で先行しているイメージがあるが、一方で日本大の方が学部構成が多様であるため、この数字が高めにでる可能性はある。また、先述のように、東洋大は「スーパーグローバル大学」として採択されているため、今後、この数値が伸びていくことも予想される。
なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、東洋大が7位(79ポイント)、日本大は19位(20ポイント)であり、高校現場の印象では、東洋大の改革イメージが強いようである。
<まとめ>
以上、東洋大理工学部と日本大理工学部を比較してみてきた。全体的には、日本大理工学部に軍配があがる。
しかし、最後に強調したいのは、「理工系学部」は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。
理系の研究は「人(教員)」に張り付いているケースが多く、教員の大学間移籍も文系と比べて活発である。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「理工系学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。