関関同立の中でも、京都の大学同士として比べられることの多い、同志社大と立命館大。今回は両校の「スポーツ健康科学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。
(一般的な評価は「同志社大が優勢」という評価のようだが、果たしてその評価が正しいのか検証していく)。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 26733 | 32301 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 876 | 950 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 57.5 | 55 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 54 | 53 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 67 | 63 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 227 | 246 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 135 | 143 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 59.50% | 58.10% |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 81.5 | 80.5 |
入試難易度は3社とも同志社大スポーツ健康科学部が上の数値を出している。「優秀な学生が集まっているか」という観点からは、同志社大スポーツ健康科学部に軍配が上がる。ただ、差としてはさほど大きな差ではない。
なお、「競争入試の割合」は立命館大スポーツ健康科学部がやや高いが、誤差の範囲であり、いわゆる偏差値操作の可能性については考慮には入れなくて良いだろう。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もあることから、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 474 | 485 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 40.40% | 45.30% |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 1741210343 | 4,964,183,930 |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 65,133 | 153,685 |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 80 | 82.1 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 3~3.5 | 3.5~4 |
4年間でかかる学費については、立命館大スポーツ健康科学部が11万円ほど高い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
ただし、学生還元率や一人当たりの奨学費も立命館大が多く、「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、立命館大に軍配が上がる(医学部を持たない大手私立大の中では、立命館大がトップレベルの学生還元率、一人当たりの奨学費を誇っており、学生視点の大学運営として評価できる)。
なお、キャンパス周辺の家賃を比較してみると、大きな差はない。
一方で、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、同志社大の方が2%ほど低いが、誤差の範囲内であろう。
上記を総合すると、コスト面では、やや同志社大スポーツ健康科学部が優勢といえるだろう。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 京田辺【郊外型】 | びわこ・くさつ 【郊外型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 1.3 | 0.8 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 3 | 3 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 15.4 | 10 |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 35.7 | 33.7 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 11349 | 11928 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 15704 | 20652 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 42.00% | 36.60% |
女性ファッション誌 登場人数(人) | 大学 | 2011 | 19 | 7 |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 6 | 7 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 0.70% | 0.70% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 233 | 250 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 3.50% | 3.10% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 36.5 | 32.8 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 24 | 29 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 11.9 | 16.6 |
<キャンパスの立地>
同志社大理工学部は、京都駅からのアクセスだと近鉄で30分の興戸駅から徒歩15分の「京田辺キャンパス」で4年間を過ごす。率直に言うと、アクセスはあまりよくない。その分、緑いっぱいの広大なキャンパスで伸び伸びとした学生生活を送ることができる。じっくり勉強したい学生にとっては悪い環境ではない。
一方の立命館大スポーツ健康科学部は、京都ではなく滋賀県にある「びわこ・くさつキャンパス」で4年間を過ごす。JR東海道線南草津駅からバスで10分の場所である。郊外型キャンパスではあるが、電車の便はさほど悪くはない(京都駅からの所要時間は40分と、さほど長くない)。このキャンパスの魅力はその広さであり、甲子園球場の15倍程度といわれており、のびのびと学生生活が送れそうなキャンパスである。
キャンパスの立地については、どちらも郊外型キャンパスであり、似ている。互角といえるだろう。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、双方ともかなり低く、差はほとんどない。したがって、退学率は判断材料にはならないだろう。。
なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、立命館大が8位(65ポイント)、同志社大はランク外(24ポイント以下)となっており、高校教育の現場においては、立命館大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。
<学生の属性>
学生の属性を比較していくと、まず、同志社大スポーツ健康科学部の女子学生比率が少しだけ高いが、僅差である。
また、外国人留学生の割合については、同率である。
上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、互角といえる。
<教育面>
教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、同志社大に軍配が上がる。しかし、その差は大きくはなく、立命館が劣っているとも言えない状況である(「スポーツ健康科学」を学ぶ上では、留学に行きやすいかどうかは、あまり気にしなくてよいかもしれない)。
次に、専任教員一人当たりの学生数(ST比)を比較すると、同志社大スポーツ健康科学部の数値が少しだけ硬いが、僅差である。この数値の差により立命館大の方が「少人数教育」の環境が整っているとまでは言えないだろう。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、立命館大の方が勝っている。この数値は、落ち着いた環境で勉強できるキャンパスの特性などが影響しているのかもしれない。
実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、同志社大が18人、立命館大が20人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、同志社大が9人、立命館大が12人であり、高校側の印象では、互角といったところか。
その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、同志社大は16位(37ポイント)、立命館大は28位(17ポイント)となっている。こちらでは、同志社大がやや優位のようだ。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角という印象である。大きな判断材料は、学べる学問の中身ということになるだろう。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 32.5 | 23.5 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 169 | 208 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 6 | 16 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 3.60% | 7.70% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 8 | 10 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 4.70% | 4.80% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 19 | 51 |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 26 | 28 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 11 | 22 |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 3 | 8 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (5人以下) | 数値なし (5人以下) |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 5561 | 3754 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.21 | 0.12 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (46人以下) | 数値なし (46人以下) |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 472 | 275 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.018 | 0.009 |
<大企業に入りたい>
大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、同志社大が10%程度高い数字が出ている。これはかなりの差と言える。しかし、スポーツ健康科学部であれば、実態はこの数字より低い就職率と考えられるため、そのあたりは留意する必要がある。
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、ほとんど差はない。
しかし、警察官になりたい場合は、実績の面でいえば立命館大の方がいいかもしれない。
<主要な就職先の比較>
同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
三井住友銀行 | アサヒ飲料 |
三菱東京UFJ銀行 | NTTドコモ |
日本生命保険 | キリン |
京都銀行 | サッポロビール |
みずほフィナンシャルグループ | 滋賀銀行 |
東京海上日動火災保険 | ヤクルト本社 |
国家公務員 | ヤマハ発動機 |
りそなグループ | ライオン |
南都銀行 | LIXIL |
損害保険ジャパン日本興亜 | ロート製薬 |
主要就職先については、同志社大の就職先リストは「文系学部全体」のデータとなっており、学部単体での比較ではないのでご留意いただきたい。
立命館大スポーツ健康科学部は学部単独のデータであるが、日本を代表する飲料メーカーが多く入っているのが特徴的である。
<出世した先輩の多さ>
先輩がどの程度、出世しているかを比較すると、学部単体では双方とも実績はあまりない。ただし、大学全体の比較では、同志社大に軍配が上がる。半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」であるが、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういう意味で、「上場企業の役員になりやすさ」等は同志社大の方が明らかに高く、もし出世を期待するのであれば同志社大学の方が少しは有利かもしれない。もちろん、企業によって事情は異なるし、立命館大だからといって不利になることはないだろうが、あくまでも「少しは」といった程度である。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 同志社大学 スポーツ健康 科学部 | 立命館大学 スポーツ健康 科学部 |
国からの特別補助金支給額 (千円) | 大学 | 2015 | 583,280 | 1,066,855 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 22 | 33 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。扱うデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、立命館大が勝っており、改革で先行しているイメージがある。
なお、大学通信社による2014年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、同志社大が17位(21ポイント)、立命館大は1位(259ポイント)であり、高校現場の印象でも、立命館大の改革イメージの強さが際立っている。
<まとめ>
以上、同志社大スポーツ健康科学部と立命館大スポーツ健康科学部を比較してみてきた。全体としては、やはり同志社大スポーツ健康科学部がやや優位であると言える。なお、実際に双方の学部に合格した人の選択を見てみてみると、同志社大スポーツ健康科学部に進学した人が100%、立命館大スポーツ健康科学部に進学した人が0%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という圧倒的な結果が出ている。しかし、立命館大スポーツ健康科学部が勝っている部分も少なくなく、何よりも立命館大の「改革」のスピードはすさまじく、将来的にこの序列がどうなるか注目されるところである。
また、「スポーツ健康科学」という独特な学問を学ぶのであれば、その中身についても、じっくり比較する必要があるだろう。