比較の観点は、国を挙げて推し進めている「留学」にフォーカスしたい。
扱うデータは、「トビタテ!留学JAPAN」の合格者数である。
「トビタテ!留学JAPAN」とは、官民協働の留学促進キャンペーンであり、年間約1500名の高校生と大学生に返済不要の留学奨学金を給付するという大盤振る舞い企画のことである。この制度を使えば、学生はほとんど無料で海外に長期留学できる。
この企画の合格者数を、各大学の在籍学生数で割って、実績についてランキング化してみた。
今回、この数値を比較する大きな理由は「偏差値は一切関係なしの勝負結果」であるという点である。
大学ごとの枠は一切なく、横一線で勝負をした結果で、大学によってはかなりシビアな評価結果ともいえる。
まず最初は、10名以上の合格者を輩出した私立大学のランキングをお示ししたい。
トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラムの合格学生数(1期~5期)
大学名 | 合格学生数 | 在籍学生数 | 合格学生の割合 |
四国大 | 10 | 2200 | 0.46% |
津田塾大 | 11 | 2821 | 0.39% |
国際基督教大 | 11 | 2976 | 0.37% |
創価大 | 20 | 8020 | 0.25% |
慶應義塾大 | 79 | 33500 | 0.24% |
上智大 | 33 | 14026 | 0.24% |
早稲田大 | 72 | 50439 | 0.14% |
立命館アジア太平洋大 | 8 | 5810 | 0.14% |
芝浦工業大 | 11 | 8395 | 0.13% |
中央大 | 30 | 26589 | 0.11% |
明治大 | 27 | 33310 | 0.08% |
関西学院大 | 18 | 24546 | 0.07% |
立教大 | 15 | 20611 | 0.07% |
東京理科大 | 12 | 19697 | 0.06% |
同志社大 | 15 | 29459 | 0.05% |
法政大 | 14 | 30364 | 0.05% |
東洋大 | 12 | 30484 | 0.04% |
立命館大 | 12 | 35529 | 0.03% |
このランキングを見て感じるのは、上位大学の健闘である。
特に四国大学は偏差値面では無名大学に近い中、かなりの実績を残しているといえる。
慶應、上智、早稲田あたりは順当な数値であるが、興味深いのはMARCH、関関同立の順位である。
中央>明治>関西学院>立教>同志社>法政>立命館>学習院>関西>青山学院
この序列は、いわゆる「偏差値」の序列とはやや異なるような印象があり、国際化については、各大学の明暗がはっきりしているということができるだろう。
次に、合格者数が低迷している大学についても可視化してみようと思う。
以下は、有名大学であるが、合格者数が低迷している大学をランキング化したものだ。
トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラムの合格学生数(1期~5期)
大学名 | 合格学生数 | 在籍学生数 | 合格学生の割合 |
学習院大 | 3 | 9046 | 0.03% |
京都産業大 | 4 | 12996 | 0.03% |
西南学院大 | 2 | 8315 | 0.02% |
関西大 | 5 | 30347 | 0.02% |
青山学院大 | 3 | 18975 | 0.02% |
近畿大 | 4 | 33273 | 0.01% |
甲南大 | 1 | 9256 | 0.01% |
南山大 | 1 | 9672 | 0.01% |
龍谷大 | 2 | 19896 | 0.01% |
日本大 | 5 | 70677 | 0.01% |
専修大 | 1 | 19406 | 0.01% |
駒澤大 | 0 | 15168 | - |
学生数の多寡を考慮しても、このランキングで下位でとなっている大学は、辛辣な言い方をすれば、留学政策の負け組とも言っていいだろう。
「大学生の間に長期留学をしたい」と考えており、その優先度が高い場合は以下の大学は避けた方が無難かもしれない。
また、上記のランキングは、くしくも「偏差値」の有用性も示している。
東洋大は例外であるが、いわゆる日東駒専・産近甲龍は、MARCH・関関同立との差がみられる。
同じく、MARCH・関関同立は早慶上智との差がみられる。
偏差値の高い大学は優秀な学生が集い、優秀な学生は活発な学生生活を送り、自分の希望する進路に進める可能性が高いというのは、不変の事実であると思われる。
一方で、四国大や創価大、芝浦工大は偏差値の割りに高い実績を残している事実はどう説明するか?という疑問があるかもしれない。この問いに対しては、「小規模・中規模大学は極端な留学促進政策がとりやすいこと」が一つの要因として考えられる。
大規模大学は、その規模がゆえに、特定の学生に偏った支援策は打ち出しにくく、施策が全学的にまんべんのない支援策になりやすい傾向がある。
上位にきている小規模・中規模大は素晴らしい実績を残しているが、大規模大学からしてみれば「例外」としてとらえても良いのではないかと思われる(戦うステージがやや異なるという意味で)。