2017年7月8日土曜日

MARCH対決:中央大文学部VS法政大文学部

 MARCHの中のライバル校として知られる、中央大と法政大。今回は両校の「文学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。

※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。

 また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。


「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」

項目名数値単位数値年度中央大学
文学部
法政大学
文学部
大学全体の学部生数(人)大学20152508027110
学部の学生数(人)学部201541052835
入試難易度(河合塾)学部201657.560
入試難易度(駿台)学部20165555
入試難易度(ベネッセ)学部20167170
入学者数(人)学部2016936801
競争入試での入学者(人)学部2016595541
競争入試の割合(%)学部201663.60%67.50%
入試方式の数(競争入試)学部201544
現役入学者の比率(%)学部20168383

 入試難易度は「駿台」の数値のみ互角で、「河合塾」は法政大文学部が優位であり、逆に「ベネッセ」は中央大文学部の方が上の数値を出している。
 また、偏差値操作の手法として用いられる、「競争入試の割合」についてはほぼ違いは見られないことから、総合的に見て両学部の学力差はないとみて良いだろう。


「費用対効果はどちらが高いか」

項目名数値単位数値年度中央大学
文学部
法政大学
文学部
4年間でかかる学費(万円)学部2015421448
学生還元率(%)大学201535.70%38.00%
奨学費(円)大学20151,245,994,977994,270,147
学生一人当たりの奨学費(円)大学20154968136675
卒業率(%)学部201484.979.5
最寄駅の平均家賃(万円)20164.5~58.5~9

 4年間でかかる学費については、中央大文学部が27万円安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
 一方で、学生還元率はやや法政大が高く、一人当たりの奨学費は中央大が多い。「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、互角であろう。
 また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、中央大の方が随分安く、一人暮らしのコストは中央大の方が安くなるだろう。ただ、法政大の場合は徒歩圏内に住むケースは少ないであろう(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
 留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、法政大文学部が5%程度高い。
 以上を加味すると、全般的なコストパフォーマンスは、中央大文学部が有利といえるだろう。


「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」

項目名数値単位数値年度中央大学
文学部
法政大学
文学部
キャンパス学部2016多摩【郊外型】市ヶ谷【都市型】
1年以内退学率(%)学部201411
4年間退学率(%)学部20143.32.9
入学者の地元占有率(%)学部201634.626.8
大学全体の首都圏出身比率(%)大学201556.161.6
女子入学者の割合(%)学部201655.349.4
大学全体の女子学生数(人)大学2016906410509
大学全体の男子学生数(人)大学20161575718067
大学全体の女子学生比率(%)大学201636.50%36.80%
女性ファッション誌
登場人数(人)
大学20112386
受入留学生数(人)学部20155045
留学生比率
(留学生数/全学生数)
学部20161.20%1.60%
長期留学派遣学生数(人)大学20158572
長期留学派遣の割合(%)大学20151.40%1.10%
ST比(人)学部201544.138.8
専任教員数(人)学部20159373
一人当たり貸出冊数(冊)大学20154.87.4

<キャンパスの立地>
 中央大文学部は、東京都八王子市の多摩キャンパスで4年間を過ごすことになり、いわゆる典型的な「郊外型キャンパス」である。広々とした環境で4年間を過ごせるが「都会に出たい」といって上京する学生にとってはやや、物足りないと思うかもしれない。
 一方で、法政大文学部は市ヶ谷にキャンパスを構えている。ボアソナードタワーを中心として、都市型キャンパスではあるが、周辺はオフィス街の雰囲気が強く、「学生街」としてのイメージはない。とはいうものの、神楽坂が徒歩圏内であったりと、利便性が悪いとも言えない。
 キャンパスの立地については、法政大に軍配が上がるだろう。

<ドロップアウトリスク>
 続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、4年間での退学率は中央大文学部がやや高い。
 とはいうものの、双方に大きな差があるわけではなく、退学率は判断材料にはなりえないだろう。
 なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、、中央大が20位(29ポイント)、法政大が18位(35ポイント)となっており、高校教育の現場においては、法政大の方が僅差ではあるものの「面倒見が良い」という印象があるようだ。

<学生の属性>
 学生の属性を比較していくと、文学部だけに双方とも女子学生の比率が高いが、その中でも中央大文学部の方が女子学生比率がより高いようである。とはいうものの、大学全体の女子学生比率においてはほぼ同率であるため、キャンパス内の雰囲気はほとんど違いはないだろう。
 なお、地元占有率(東京都出身)については法政大文学部が低いが、大学全体の地方(首都圏以外)出身者の割合は中央大の方が多い特徴がある。トータルで見ると、中央大の方が全国から学生を集めていると言えるが、大きな差ではないため、判断材料にはならないだろう。
 なお、留学生比率については、法政大文学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、法政大文学部が優れているといえる。

<教育面>
 次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、中央大に軍配が上がりそうだ。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
 専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、法政大文学部が低く、「少人数教育」の環境としては法政大文学部が優位といえる。
 なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、法政大が多い。この数字は逆に中央大が低すぎであり、中央大のマイナスポイントであるだろう。

 実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
 2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、中央大が19人、法政大が6人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、中央大が10人、法政大が17人であり、高校側の印象では、中央大の方がより生徒を伸ばしてくれると感じているようだ。
 その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、中央大は28位(17ポイント)、法政大は47位(11ポイント)となっており、同じように、中央大がやや優位のようだ。

 上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると互角に近いといいたいが、キャンパス立地の差を考えると、やや法政大が優勢のような印象を受ける。


「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名数値単位数値年度中央大学
文学部
法政大学
文学部
主要企業400社への就職率(%)大学201623.322.5
卒業生数(人)学部2015941641
進学者数(人)学部20154632
進学率(%)学部20154.90%5.00%
公務員就職者数(人)学部20155135
公務員就職比率(%)学部20155.40%5.50%
警察官就職者数(人)大学20152857
国家公務員総合職(人)大学2015486
CA採用数(人)大学20141320
国会議員の数(人)大学20153111
上場企業の社長数(人)学部2006数値なし
(5人以下)
数値なし
(5人以下)
社長の数(人)大学201585346971
社長になりやすさ
(社長の数/学生数)
大学20150.340.26
上場企業の役員数(人)学部2006数値なし
(46人以下)
数値なし
(46人以下)
上場企業の役員数(人)大学2015969341
上場企業の役員になりやすさ
(上場企業役員数/学生数)
大学20150.0390.013

<大企業に入りたい>
 大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、両大学に差はほとんどない。
 また、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、中央大文学部と法政大文学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくる。大企業に就職したいからという理由でどちらかを選ぶという判断材料にはなりえないだろう。

<公務員になりたい>
 学部単体の公務員就職比率は、ほぼ互角であり、公務員になることを想定しているのであればどちらを選んでも違いはないだろう。
 なお、国家公務員総合職に関しては、「文学部」からその進路に進む学生がほとんどいないと考えられるため、あくまで大学全体の参考値として見ていただきたい。


<主要な就職先の比較>

中央大学
文学部
法政大学
文学部
みずほフィナンシャルグループみずほフィナンシャルグループ
東京都教育委員会日本郵政グループ
三井住友銀行警視庁
東日本旅客鉄道三菱東京UFJ銀行
臨海明治安田生命保険
三菱東京UFJ銀行都道府県庁
エイチ・アイ・エス三井不動産リアルティ
日本生命保険セブン&アイホールディングス
ジェイティービー日本出版販売
全日本空輸東日本旅客鉄道

 主要就職先については、大手金融機関が多い特徴は似ているが、比較した際にで目立つのは、中央大文学部の「航空・旅行関係」の多さだ。たまたまであるかもしれないが、志望する業界に先輩が多いのはその業界へ就職するときに有利になると考えられるため、一つの判断材料にはなるかもしれない(ライバルは多いが、OB・OG訪問などがしやすいメリットがある)。
 一方で、法政大文学部は公務員や日本郵政など、安定したイメージの進路が目立つ。

<出世した先輩の多さ>
 双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出しているが、大学全体としての役員輩出率は中央大が3倍ほど高い。しかし、「文学部」に限ってみると、それほど多くはないことが推測される。したがって、ここで示している数字はあくまで参考値として見ていただきたい。しかし一方で、半ば都市伝説として語られることも多い「学閥」は大学単位であり、もし存在するのであればその大学の出身者は有利になる。一方で「学閥」が実際はないのであれば、先輩たちが実力で出世していったということにもなり、その大学の出身者が周りから高く評価されていることにもなる。そういった意味では、中央大学文学部の方がやや有利と言えるかもしれない。

<上位校との差について>
 以前は文学部は就職で不利になるともいわれたが、双方の大学とも就職実績については良好といえよう。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。エントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社など一部の業界などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶以上の大学にチャレンジした方がいいという判断もありうる。
 また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。


<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>

項目名数値単位数値年度中央大学
文学部
法政大学
文学部
国からの特別補助金支給額
(千円)
大学2015596,960446,556
学生一人当たり
特別補助金支給額(千円)
大学20152416

 大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
 この数値を比較すると、中央大が優勢となっている。
 別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、法政大が12位(54ポイント)、中央大はランク外(21位以下)と、法政大が勝っている。

<まとめ>
 以上、中央大文学部と法政大文学部を比較してみてきたが、全体の印象としては法政大文学部の方が僅かばかり優位と感じられる。実際に両方に合格した人の選択を見てみても、中央大文学部に進学した人が39%、法政大文学部に進学した人が61%(サンデー毎日2014年7月20日号より)という結果が出ている。
 それでも、キャンパスの立地について「都市型」にこだわりがない場合や、進学費用をできるだけ安くしたいと考える人は、中央大文学部を選択するのも悪くはないとも思われる。価値観によっては中央大が優勢になることも十分に考えられるほどの僅差といえるだろう。
 そして何よりも強調したいのは、文学部の場合は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。