今回の比較対象は、GMARCHのくくりの中で比較されることの多い学習院大と明治大。その中でも、双方の「文学部」に合格した場合、どちらに進学するのが良いかという観点から比較していきたい。
また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 8261 | 30538 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 2923 | 3628 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 57.5 | 62.5 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 56 | 57 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 70 | 73 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 742 | 710 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 447 | 578 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 60.20% | 81.40% |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 85.4 | 86.5 |
入試難易度は3社とも明治大文学部が高くなっている。これだけ顕著であれば、明治大文学部の方が上ということができるが、駿台などは「1」しか難易度が違わないこともあり、大きな差ではない。
しかし、「競争入試の割合」は明治大文学部が80%超と、とても高く、そのことを加味すると、実際の難易度の差はもっと開いていると考えてもいいかもしれない。
(一般入試、センター試験利用入試などの「競争入試」で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多く、競争入試の割合を下げることにより偏差値を高く見せる大学もある。そのため、本ブログでは、「競争入試の割合」を比較するようにしている。)
よって、明治大文学部の方が「入学時点で優秀な学生が集まっている」といえるだろう。
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 466 | 442 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 37.00% | 52.90% |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 282,939,439 | 1,382,901,203 |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 34250 | 45285 |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 84.6 | 82 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 6~6.5 | 和泉5.5~6、 駿河台8.5~9 |
4年間でかかる学費については、学習院大文学部が24万円ほど高い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
また、学生還元率や一人当たりの奨学費など「学生が払った学費をどれだけ学生のために使っているか」という観点からは、明治大に軍配が上がる。
なお、キャンパス周辺の家賃を考えてみると、互角といえよう。明治大の和泉キャンパスの周辺は安いが、3年次以降の駿河台キャンパスの周辺家賃は高い(大学と住居が近ければ利便性も高く、充実した学生生活になる可能性が高いという考えからこの家賃相場を比較している)。
留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、学習院大文学部が2%程度低いが、僅差であるため、判断材料にはならないだろう。
以上を総合すると、コスト面では、明治大文学部が優位といっていいだろう。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 目白【都市型】 | 和泉(1~2年) 【中間型】、 駿河台(3~4年) 【都市型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 0.4 | 1.8 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 3.5 | 2.8 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 35.6 | 36.9 |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 69.5 | 56.3 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 4276 | 10545 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 4282 | 20289 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 50.00% | 34.20% |
女性ファッション誌 登場人数(人) | 大学 | 2011 | 102 | 5 |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 51 | 53 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 1.70% | 1.50% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 70 | 86 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 3.40% | 1.10% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 30.8 | 34.2 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 95 | 106 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 11.3 | 9.6 |
<キャンパスの立地>
学習院大文学部は、JR山手線の目白駅から徒歩30秒の利便性抜群の立地にキャンパスを構えている。通常、都市型キャンパスは学生数に対して敷地が狭く、窮屈なイメージがあるが、学習院は例外で、緑の多い広々としたキャンパスで4年間を過ごせる。
一方で、明治大文学部は1、2年と3、4年でキャンパスが変わる。1、2年次の和泉キャンパスは新宿から京王線特急で1駅と交通の便は良く、学生街として環境は整っている。3年次以降の駿河台は都心部にあるものの、昔ながらの神田学生街の中心となっており、こちらも不便はないといえる。難点を言えば、キャンパスが手狭であり窮屈な印象があることか。
キャンパスの立地については、はっきり言って甲乙はつけがたいが、キャンパスの広さ等を比較すると、環境的には学習院大が勝っていると言えるだろう。学習院大のキャンパス環境は、私立大学の中でもトップクラスといえるほどである。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、1年退学率は学習院大文学部が低く、4年退学率は明治大文学部の方が低い。双方ともに低い数値であり、互角といえるだろう。
なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、学習院大が30位(26ポイント)、明治大が4位(117ポイント)となっており、高校教育の現場においては、明治大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。
<学生の属性>
学生の属性を比較していくと、文学部だけあって、学部単体の女子学生比率は双方とも高い。その中でも学習院大文学部の方が13%程度高く、それなりの違いが出ている。
女子にとっては仲間が多いと考えるか、ライバルが多い?と考えるかでそれぞれの考え方はあるだろうが、女性が多いことでキャンパス内、教室内の雰囲気が華やかであることは間違いない事実だろう。
なお、留学生比率については、学習院大文学部の方がやや高いが、僅差であるため、国際色豊かな教育環境という意味では、互角だろうか。
上記を総合すると、「多様な価値観に触れる(ダイバーシティ)」という観点では、やや学習院大文学部が少しだけ優勢か。
<教育面>
教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、学習院大に軍配が上がる。先輩の学生が留学に行っている割合が多ければ、自然と留学が身近になるため、もし留学をしたいと考えているのであれば、一つの判断材料にはなりうる。
また、専任教員一人当たりの学生数(ST比)についても、学習院大の方が低く、より「少人数教育」の環境が整っているといえる。ただし、ST比の差は大きくはないため、明治大文学部が劣っているかといえばそうではない。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、やや学習院大が多いが、大差ではない。
実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、学習院大が7人、明治大が26人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、学習院大がランク外(3人以下)、明治大が19人であり、高校側の印象では、ほぼ互角といったところか。
その他の比較としては、同じく大学通信社による2014年度「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、学習院大は27位(18ポイント)、明治大は6位(86ポイント)となっている。こちらでは、明治大がやや優位のようだ。なお、これらの高校教員向けのアンケートについては、学生数が多い大学が有利になる傾向にあるため、学生数が学習院大の3倍以上の明治大の方が有利な結果が出やすいことは考慮しておいた方が良いだろう。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、やや学習院大が優勢のような印象を受ける。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 27.8 | 26.7 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 654 | 700 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 48 | 40 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 7.30% | 5.70% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 27 | 40 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 4.10% | 5.70% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 7 | 36 |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 数値なし (1人以下) | 25 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 12 | 11 |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 7 | 16 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (5人以下) | 数値なし (5人以下) |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 1604 | 9580 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.19 | 0.31 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 数値なし (46人以下) | 数値なし (46人以下) |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 146 | 650 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.018 | 0.021 |
<大企業に入りたい>
大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、ほぼ互角という数字が出ている。
ただし、「文学部」は文系学部の中では就職に弱い学部と言われており、法学部や経済学部、商学部などの社会科学系学部と比べると、主要企業400社への就職率は低くなると思われるため、文学部単体で見れば、見かけの数値より低くなることは理解しておいた方が良いだろう。
もっとも、いわゆる「学歴フィルター」の対象としては、学習院大文学部と明治大文学部で差がつくことは考えられないため、いかに充実した(中身のある)大学生活を送るかによって、大企業に就職できるか・できないかは変わってくることを理解しておきたい。
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、明治大文学部の方が少し高い数字が出ており、明治大文学部の方がやや優位か。ただし大差ではないため、公務員志望だからといって明治大文学部を選ぶほどの差ではないだろう。
<主要な就職先の比較>
学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
みずほフィナンシャルグループ | 日本郵政グループ |
三井住友銀 | みずほフィナンシャルグループ |
マイナビ | 国家公務員 |
千葉銀行 | JTBグループ |
三菱東京UFJ銀行 | 東京都特別区 |
全日本空輸 | 京葉銀行 |
日本郵便 | 昭和システムエンジニアリング |
日本生命保険 | 大和ハウス工業 |
日本航空 | 日本年金機構 |
学習院 | 東日本旅客鉄道 |
主要就職先を見てみると、学習院大文学部は金融機関が目立つ。一方の明治大文学部はより幅広い業界の企業が名を連ねている。双方とも人気企業が並んでおり、悪くはない就職実績だろう。
<出世した先輩の多さ>
学部単位では、先輩がどのくらい出世しているかの比較データは存在しない。しかし、大学単位で比較すると、社長輩出率、役員輩出率ともに明治大が高い。「学閥」を考えた場合は、明治大がやや有利といえるだろう。
<上位校との差について>
前述のように、双方の大学とも就職実績については悪くないといえる。しかし一方で、「早慶」との学歴フィルターの差の存在も忘れてはいけない。入社試験を受けるエントリー段階では公平であっても、いざ採用実績となるとGMARCHがほとんど入っていないケースが、総合商社などに見られる。そういった企業を目指すのであれば、一浪してでも早慶などにチャレンジした方がいいという判断もありうる。
また、両大学ともメガバンクなど大手金融機関に就職する人が多いが、それらの企業で出世したいのであれば、浪人してでも東大や一橋などに頑張って入った方がいいかもしれない。大手金融機関の中には、入社時よりランク付けがなされており、早慶MARCH出身者が出世できる可能性が低くなっており、いわゆる現場の「ソルジャー部隊」として重宝されているに過ぎないといった現実もある。入学前からこのようなことを考えるのは難しいだろうが、就職活動時にも、このことは気に留めておいた方がよいだろう。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 学習院大学 文学部 | 明治大学 文学部 |
国からの特別補助金支給額 (千円) | 大学 | 2015 | 314,381 | 738,498 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 38 | 24 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、やや学習院大の方が優勢といえる。
また、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、学習院大は27位(18ポイント)、明治大が3位(133ポイント)と、高校現場の印象では、明治大が勝っているといえよう。
<まとめ>
以上、学習院大文学部と明治大文学部を比較してみてきたが、総合してみると、明治大文学部の方がやや優位と感じられる。キャンパスライフの面では学習院大が優位にも感じるが、学費面や「より優秀な学生が集まっているか」という観点の比較において、やはり差があるように感じる。
一方で、強調したいのは、文学部の場合は、学問分野が細分化されているため、どこで学ぶかよりも「何を学ぶか」が重要であることは忘れてはいけない。自分の学びたい学問分野の第一人者が片方の大学にしかいなければ、文句なしにそちらの大学を選ぶべきである。「文学部」を選ぶ以上は、そういった観点も含めて、大学選択を行っていただければ幸いである。