というのも、慶應義塾大と上智大は一般的に慶應>上智と言われており、同じ学問系統であればあまり迷いなく慶應を選ぶケースが多いためである。
それが、慶應の中位学部と上智の上位学部との比較においては事情が変わってくるため、今回の比較対象はこの2学部とした。
※各指標の定義・根拠・出典等については、こちらのページをご覧ください。
また、スマートフォンで閲覧する場合は、画面を横にすると各指標が見やすいです。
「入学段階では、どちらが優秀な学生が集まっているか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
大学全体の学部生数(人) | 大学 | 2015 | 28855 | 12376 |
学部の学生数(人) | 学部 | 2015 | 4431 | 1494 |
入試難易度(河合塾) | 学部 | 2016 | 65 | 65 |
入試難易度(駿台) | 学部 | 2016 | 62 | 65 |
入試難易度(ベネッセ) | 学部 | 2016 | 79 | 77 |
入学者数(人) | 学部 | 2016 | 1027 | 332 |
競争入試での入学者(人) | 学部 | 2016 | 582 | 200 |
競争入試の割合(%) | 学部 | 2016 | 56.70% | 60.20% |
入試方式の数(競争入試) | 学部 | 2015 | 2 | 2 |
現役入学者の比率(%) | 学部 | 2016 | 数値なし | 76.8 |
入試難易度は、双方ともに1勝1敗1分の数値となっている。予備校としては、互角とみているようである。
「競争入試の割合」は上智大法学部が高いものの、僅差である。一方、「入学定員」は慶應義塾大商学部が多い。したがって、予備校の難易度は額面通りに受け取っていいだろう(競争入試(一般入試、センター試験利用入試)で入学する学生の方が、推薦入試や附属高上がりの学生よりも学力が高いケースが多い。その意味で、競争入試で入った学生の割合が多いほど優秀と言えるのだが、競争入試の割合を高くすると、間口が広がってしまうことで入試偏差値が下がる恐れもある。偏差値操作の実態を加味するため、本ブログでは競争入試の割合等を比較するようにしている)。
「費用対効果はどちらが高いか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
4年間でかかる学費(万円) | 学部 | 2015 | 456 | 411 |
学生還元率(%) | 大学 | 2015 | 128.10% | 40.20% |
奨学費(円) | 大学 | 2015 | 1,583,391,072 | 355,420,073 |
学生一人当たりの奨学費(円) | 大学 | 2015 | 54874 | 28718 |
卒業率(%) | 学部 | 2014 | 74 | 73 |
最寄駅の平均家賃(万円) | 2016 | 日吉5.0~5.5、 三田8.5~9.0 | 8.5~9 |
4年間でかかる学費については、上智大法学部が45万円ほど安い(学科や専攻によって学費が違う可能性があるため、詳細な比較は各大学のホームページをご確認いただきたい)。
学生還元率については、大学全体の数値であり、慶應義塾大学医学部による「医療収入」によってきわめて高い数値が出ている。両学部の比較には適さないことを付記しておきたい。単純比較が可能であるのは「学生一人当たりの奨学費」であるが、慶應義塾大の方が高額となっている。
また、キャンパス周辺の家賃を考えてみてると、慶應義塾大の方がやや安く、一人暮らしのコストは慶應義塾大の方が安くなるだろう。
なお、留年リスク(4年間で卒業できない比率)については、ほとんど同じであり、比較にはならない。
以上を加味すると、全般的なコストパフォーマンスは、上智大法学部が優位といえるだろう。
「どちらの大学が充実した学生生活を過ごせるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
キャンパス | 学部 | 2016 | 日吉(1~2年) 【郊外型】、 三田(3~4年) 【都市型】 | 四谷【都市型】 |
1年以内退学率(%) | 学部 | 2014 | 0.5 | 0.6 |
4年間退学率(%) | 学部 | 2014 | 2.2 | 2.5 |
入学者の地元占有率(%) | 学部 | 2016 | 数値なし | 32.8 |
大学全体の首都圏出身比率(%) | 大学 | 2015 | 57.1 | 数値なし |
女子入学者の割合(%) | 学部 | 2016 | 数値なし | 53 |
大学全体の女子学生数(人) | 大学 | 2016 | 10247 | 7248 |
大学全体の男子学生数(人) | 大学 | 2016 | 18488 | 5386 |
大学全体の女子学生比率(%) | 大学 | 2016 | 35.70% | 57.40% |
女性ファッション誌登場人数(人) | 大学 | 2011 | 67 | 43 |
受入留学生数(人) | 学部 | 2015 | 146 | 37 |
留学生比率 (留学生数/全学生数) | 学部 | 2016 | 3.30% | 2.50% |
長期留学派遣学生数(人) | 大学 | 2015 | 247 | 251 |
長期留学派遣の割合(%) | 大学 | 2015 | 3.40% | 8.10% |
ST比(人) | 学部 | 2015 | 41.4 | 46.7 |
専任教員数(人) | 学部 | 2015 | 107 | 32 |
一人当たり貸出冊数(冊) | 大学 | 2015 | 27.2 | 13.6 |
<キャンパスの立地>
まずはキャンパスの立地の比較から。慶應義塾大商学部は1、2年と3、4年でキャンパスが変わる。1、2年次の日吉キャンパスは「郊外型」というほど田舎ではないが、都心部からは離れる(渋谷から東急線の特急で20分程度かかる)。日吉はベッドタウンとしてのイメージが強く、静かな環境で2年間のキャンパスライフを送れそうだ。とはいいつつも、キャンパスは駅前に位置するため、渋谷や横浜にでるのはかなり便利の良いキャンパスであり、いわゆる「遊びたい学生」にとっても不満はないキャンパスだろう。3年次以降の三田キャンパスは都心部にあり、山手線でいえば最寄り駅は「田町駅」。オフィス街の様相が強いが、学生向けのお店などもそれなりに充実している。
一方の、上智大は東京のビジネス街・四ツ谷駅から徒歩2分の場所にキャンパスを構えており、アクセスは抜群である。高級歓楽街・赤坂も徒歩圏内であり、学生時代から東京の中心部で社会との接点を持つには最適の環境である。ただし、学生数に比してキャンパスは狭い印象がある。また、周囲の物価は高めであり、貧乏学生にはつらい面もあるかもしれない。
両者のキャンパスを比較すると、アクセス面では上智大が勝る。そして4年間同一キャンパスであることも上智大のメリットと考えられる。単純なキャンパス比較では上智大法学部が上と言えるだろう。
<ドロップアウトリスク>
続いて、誰しも避けては通れない、ドロップアウトのリスク。せっかく頑張って勉強して大学に入学したのに、退学してしまっては元も子もない。双方とも大規模大学であるため、退学率は注視すべきデータであるが、ほとんど変わらないため、互角とみていいだろう。
なお、大学通信社による2016年度「面倒見が良い大学」ランキング(進学校の進路指導教員にアンケートを行って選定)においては、慶應義塾大が19位(32ポイント)、上智大が27位(26ポイント)となっており、高校教育の現場においては、慶應義塾大の方が「面倒見が良い」という印象があるようだ。
<学生の属性>
留学生比率については、慶應義塾大商学部の方が多く、国際色豊かな教育環境という意味では、慶應義塾大商学部がやや優れているといえる。
一方で、女子学生比率については、上智大の方が多い。学生のダイバーシティの面では、互角といっていいだろう。
<教育面>
次に、教育面を比較していくと、現在、各大学が競うように力を入れている「留学」については、長期留学している学生の割合を見ると、上智大に軍配が上がる。留学をしたいのであれば上智大を選ぶ方が良いかもしれない。
専任教員一人当たりの学生数(ST比)は、慶應義塾大商学部が低く、「少人数教育」の環境としては慶應義塾大商学部がやや優位といえる。
なお、学生がどれだけ勉強しているかの指標の一つである「一人当たりの貸出冊数」については、慶應義塾大が多い。
実際の教育効果については、比較が難しいが、大学通信社が進学校の進路指導教員に「進学して伸びた大学」と「進学して伸び悩んだ大学」をアンケートしている。
2014年10月に実施したアンケートでは、「進学して伸びた」と答えた数は、慶應義塾大が40人、上智大が15人、一方で「進学して伸び悩んだ」と答えた数は、慶應義塾大が6人、上智大がランク外(3人以下)であり、高校側の印象では、互角といっていいだろう。
その他の比較としては大学通信による「入学後、生徒の満足度が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)において、慶應義塾大は5位(142ポイント)、上智大が10位(54ポイント)となっており、こちらは慶應義塾大が優位のようだ。
上記を総合すると、充実したキャンパスライフという観点から見ると、ほぼ互角といっていいだろう。大きな違いは、やはりキャンパスだろうか。両方のキャンパスに足を運んで自分の目で雰囲気を確かめることとおすすめしたい。
「どちらが幸せな人生を送れる進路に進めるか」
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
主要企業400社への就職率(%) | 大学 | 2016 | 46.9 | 33.8 |
卒業生数(人) | 学部 | 2015 | 1030 | 335 |
進学者数(人) | 学部 | 2015 | 17 | 27 |
進学率(%) | 学部 | 2015 | 1.70% | 8.10% |
公務員就職者数(人) | 学部 | 2015 | 26 | 34 |
公務員就職比率(%) | 学部 | 2015 | 2.50% | 10.10% |
警察官就職者数(人) | 大学 | 2015 | 数値なし | 数値なし |
国家公務員総合職(人) | 大学 | 2015 | 92 | 13 |
CA採用数(人) | 大学 | 2014 | 数値なし | 30 |
国会議員の数(人) | 大学 | 2015 | 87 | 11 |
上場企業の社長数(人) | 学部 | 2006 | 57 | 数値なし (5人以下) |
社長の数(人) | 大学 | 2015 | 11703 | 1491 |
社長になりやすさ (社長の数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.41 | 0.12 |
上場企業の役員数(人) | 学部 | 2006 | 303 | 数値なし (46人以下) |
上場企業の役員数(人) | 大学 | 2015 | 2153 | 187 |
上場企業の役員になりやすさ (上場企業役員数/学生数) | 大学 | 2015 | 0.075 | 0.015 |
<大企業に入りたい>
大企業社員として就職すれば、身分は安定し、給与・福利厚生などの待遇面での心配も少ない。その意味で、主要400社への就職率を比較材料として示しているが、慶應大の方が高い結果が出ている。
<法曹(弁護士、検察官、裁判官)になりたい>
社会科学系の学部を選ぶのであれば、弁護士などの法曹になりたい人も多いと思うが、もし法曹として進路を希望するのであれば、上智大法学部の方が良い。
進学率(ロースクール進学率)が高いのは上智大法学部であるし、学部時代の4年間において法律を重点的に学べるのは、上智大法学部であるからだ(もっとも、このことはすべての受験生は百も承知であろうが…)。
<公認会計士になりたい>
公認会計士を目指す場合は、合格実績が上の慶應義塾大の方が良いだろう。法曹を目指す場合とは反対に、会計などの専門分野を授業で学べるのは商学部であり、慶應義塾大商学部が有利であるのは疑いようのない事実であろう。
<公務員になりたい>
学部単体の公務員就職比率は、上智大法学部が高い。慶應義塾大商学部の学生が民間就職志向が強いことの裏返しであろうが、公務員試験を目指す場合は上智大法学部がいいかもしれない(公務員試験は法律科目が多いため、学部の授業でそれらを学べるのも有利な理由の一つといえる)。
ただし、国家公務員総合職を目指すのであれば慶應義塾大の方がいいだろう。学部単体の実績はさほどないものの、大学としての合格実績がかなりあり、各省庁に散らばっているOBの存在が、入省後も有利に働くであろう。
<主要な就職先の比較>
慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
みずほフィナンシャルグループ | みずほフィナンシャルグループ |
三井住友銀行 | 三井住友銀行 |
三菱東京UFJ銀行 | 損害保険ジャパン日本興亜 |
東京海上日動火災保険 | 三井不動産リアルティ |
野村証券 | 大和証券 |
三井住友海上火災保険 | NTTデータ |
大和証券 | 東京都 |
三菱東京UFJ銀行 | |
博報堂 | |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 |
主要就職先については、双方とも大手金融機関が多い特徴は似ている。
どちらも就職状況は良好といえるだろう。ただし、未確認情報ではあるが、一部の企業では「早慶」と「上智」の比較で、学歴フィルターをかけているという情報もあるため、純粋に間口の広さでは慶應義塾大商学部の方が若干有利かもしれない。
<出世した先輩の多さ>
双方とも名門大学であり、上場企業の役員などを「大学全体」として数多く輩出しているが、大学全体としての役員輩出率は慶應義塾大が圧倒している。そしてさらに、学部単体でみてみても、その差は顕著である。「学閥」で考えた場合は、慶應義塾大商学部が有利であろう。
<どちらの大学が頑張って「改革」しているか>
項目名 | 数値単位 | 数値年度 | 慶應義塾大学 商学部 | 上智大学 法学部 |
国からの特別補助金 支給額(千円) | 大学 | 2015 | 903,728 | 344,777 |
学生一人当たり 特別補助金支給額(千円) | 大学 | 2015 | 31 | 28 |
大学教育の現場では、随分前から「改革の必要性」が叫ばれている(大手大学ほど、その改革が進んでいないともいわれる…)。その観点でどちらが頑張って「改革」しているかを、最後に見てみたい。ここで比較するデータは、改革を行っている大学に国から支給される「特別補助金」の額である。
この数値を比較すると、慶應義塾大が優勢となっている。
別の比較材料としては、大学通信社による2016年度「改革力が高い大学」ランキング(進学校の進路指導教員が投票することで選定)においては、慶應義塾大が9位(58ポイント)、上智大が19位(26ポイント)と、慶應義塾大が勝っている。
<まとめ>
以上、上智大法学部と慶應義塾大商学部を比較してみてきたが、全体としては慶應義塾大商学部が優位といえるだろう。入学時の学力、キャンパスライフの面では大きな差はみられないが、進路面で差が見られる。民間企業の就職においては、慶應義塾大の優位性はゆるぎない。ただし、法曹を目指す場合などは上智大法学部が良いだろうから、目指す進路が決まっているのであれば、大学選びにもそれを反映させると良いと思う。